アトピー性皮膚炎

症状

かゆみと新旧の湿疹が長い期間にわたって繰り返し起こる慢性の皮膚疾患で、赤ちゃんからお年寄りまで様々な年代の方に見られる疾患です。当科では日本皮膚科学会の「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン」に則して診察しております。皮膚の症状は軽症から重症に分かれ、また、年齢によって症状のでかたが変わります。
乳児期は頭、顔にはじまり、しばしば体幹、四肢に皮膚症状が広がっていきます。幼小児期では首、肘や膝の左右対称の湿疹が目立ちます。成人になると左右対側性で、おでこ、眼、口、耳の周囲、首、四肢関節部によく見られます。

治療

アトピー性皮膚炎はかぶれなどとは異なりますので、治療してすぐに治る病気ではありません。また、治療してよくなっても将来的に症状を繰り返す可能性がないとは言い切れない病気です。治療のゴールは、「皮疹がない、あっても軽くて日常生活に支障がなく、薬物療法もあまり必要としない」状態です。
治療はかゆみと湿疹のコントロールと、ウィルスや細菌感染症などの合併症の予防です。それぞれの症状に応じて外用治療を中心に、スキンケアや抗アレルギー剤内服なども合わせて治療を進めます。 重症、中等症の場合はステロイド外用剤(※)を症状に応じて使い、かゆみを軽くできるよう抗アレルギー剤の内服を行います。2008年秋より、新しくシクロスポリン(免疫抑制剤)の内服が重症のアトピー性皮膚炎の治療に認められました。軽症では、タクロリムス軟膏やスキンケアで再発を予防します。また、漢方薬も最近健康保険で使用できるようになりました。臨床試験の結果も良いので、補助的に内服していただくこともありますのでご相談ください。 ダニやハウスダストなど環境要因も影響するため、当科では血液検査を行って悪化要因を探り出し、環境整備の対策を一緒に考えます。

※ステロイド外用剤の使用について

1.ステロイドとは?

ステロイドとは、腎臓の上にある副腎という部分で作られる副腎皮質ホルモンを科学的に合成して作った薬です。本来副腎皮質ホルモンは、体に外からのストレスが加わった時に体を元の状態に戻す作用があり、それを利用して治療に使います。注射薬、内服薬(飲み薬)、外用剤(軟膏や点眼、点鼻)があります。
ステロイド剤の軟膏は皮膚で起こっている湿疹や皮膚炎の反応(炎症)を抑えて治す効果があります。ただし、ステロイド剤はこのような湿疹を改善させる効果はありますが、原因まで取り除くわけではありません。

2.ステロイドは怖い薬?

ステロイドに嫌悪感を抱く最大の理由は、副作用にあるのではないでしょうか?
マスコミでも「ステロイドは恐ろしい」というような報道が多くされた時期もあり、恐怖感をもってしまった人たちがかなり多く出ました。確かに、強いステロイド剤を効くからといって不用意に、長期間にわたって塗ると、皮膚が薄くなったり、毛細血管が拡張するなどの副作用が出ます。大量に塗ると自分の本来持っている副腎皮質ホルモンのバランスを崩すこともあります。ステロイドに限らず薬には副作用がありますが、いかにして副作用を減らし治療を行うかが薬の正しい利用方法です。そのためには、診察を受けたうえで症状にあった薬を選んで使用することが大切です。

3.ステロイド外用剤はどういう症状のときに処方される?

湿疹、皮膚炎と呼ばれる皮膚のトラブルがひどいときに使用します。代表的なものは急激に強い炎症を起こす虫さされ、かぶれ、やけどなどです。アトピー性皮膚炎や乳児湿疹、乾燥性湿疹、あせもなども、スキンケアやステロイドの入っていない薬で改善しないようなひどいケースに使用します。実際には、ステロイド外用剤は患者さんの年齢、症状、塗る部位に応じて使い分けをします。子どもの皮膚トラブルでは大人に比べてマイルドなものを使用します。これは子どもの皮膚は未熟で薄いので、大人よりも皮膚によく浸透して効果も高く出るからです。またステロイドの吸収率が異なるため、部位が変わると塗り薬の種類も変わります。腕の吸収率を1とすると、顔は13、足のうらは0.14と差があります。吸収率のよいところは薬がとてもよく効くのですが、皮膚での副作用も出やすくなります。そのため、処方された薬を指示された部位以外に塗ることは避け、また、他の部位に接触しないように気をつけましょう。

4.ステロイドの塗り薬の「強い」「弱い」は何を指標にみているか?

薬効(血管の収縮能など)により、「非常に弱い」、「弱い」、「強い」、「非常に強い」、「最も強い」の5つのランクに分けられています。

5.ステロイド外用剤の形状は?

ステロイド外用剤は軟膏、クリーム、ローション、スプレー、テープといった形があります。べとっとして透明なのが軟膏、白っぽいのはクリームです。これらは皮膚の表面の状態によって使い分けます。

軟 膏 じくじくしていたり、掻き傷があったりして、皮膚の表面が壊れている時に使います。軟膏には皮膚を保護する作用があるからです。
クリーム クリームはさらっとしていて塗りやすく、顔や手に塗ったり、夏などべたべ たするのを避けたいときに使うことがありますが、皮膚の壊れた湿疹にはしみることがあり、皮膚を保護する作用はありません。
ローション 頭は、髪の毛がべたべたせずに頭皮にうまく使えるローションをよく使います。
スプレー 日焼けして肌に触れると痛い場合、使用することがあります。
テープ 小さいしこりになってしまったかゆみの強い湿疹(痒疹)や、手荒れで亀裂などがある時に使用することがあります。薬がよく浸透し、外的な刺激から患部を守る役割があります。

6.ステロイドの塗り薬の正しい使い方は?(塗り方、期間、塗ったあとの注意など)

第一番に大切なことは、薬を塗る患部と手を清潔にしてからスタートすることです。できれば、石鹸でやさしく洗ってそっとタオルで拭いてからがベストです。塗る量は1FTU(one finger tip unit)といって、人差し指の先の関節ひとつ分をチューブから出した場合、手のひら2つ分の面積が適量です。たくさんつけすぎても効果は変わりませんし、少なくても効果は出ません。指の腹ですりこまず、こすらないようにすーっと表面が少し光って見えるくらいの量を塗ります。塗る範囲が広い場合はいくつかに少しずつ分けてのせて、中指と薬指全体でのばしていきます。全身に塗る場合は、顔、陰部、首、頭、体の順番に。塗る場所で薬が変わることがありますから、塗る薬を変えるたびに手を洗うのがよいのですが、そのようにできない時は、弱いランクのステロイド外用剤を塗る部分から塗り始めていくのがよいでしょう。顔や陰部など薬の吸収率のよい部分に強いステロイド剤がつかないように塗ることが大切です。もちろん薬を塗ったあとは、手をきれいに洗って薬が手に残らないようにしておきます。塗る期間や1日に塗る回数は医師の指示通りにしてください。

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