PICC外来

食物を口から食べることができない場合、抗がん剤などの刺激の強い薬剤を使用する時、血管がなく6日以上継続した点滴加療が必要な方などに、中心静脈という心臓近くの太い血管の中に留置したカテーテルから点滴をして、生命維持に必要なエネルギーと各種栄養素の補給や抗がん剤・抗生剤などの点滴治療をする方法を中心静脈カテーテル法といいます。
当院では、末梢挿入型中心静脈カテーテル(PICC:peripherally inserted central catheter)の挿入・管理を行うための外来を開始しました。退院後も管理方法について電話対応を含むアフターケアを行っています。

PICCとは

末梢挿入型中心静脈カテーテルPICCとは、肘の静脈(尺側皮静脈、橈側皮静脈、肘正中皮静脈など)を穿刺して長いカテーテルを挿入し、腋窩静脈、鎖骨下静脈を経由して上大静脈に先端を位置させるものです。
上腕からのアプローチのため、皮膚温の低さや常在菌の少なさから感染のリスクが少なく、長期間の留置が可能です。また、PICCは一度挿入するとカテーテル感染や閉塞が起こらない限り入れ替える必要がなく、長期に渡って使用できるカテーテルです。他の中心静脈カテーテルと比較して、腕から比較的簡単に挿入できるため、致死的合併症も少ないことから安全性の高い方法です。
当院で使用しているカテーテルの素材は、シリコン製のため血管壁へのダメージも少なく先端がバルブ式になっており血液の逆流を防ぐため、不意に輸液ラインが外れた際にも空気塞栓・出血を防ぐことができます。また、不使用時は、1回/週の生理食塩液で洗浄するのみと管理も簡便です。

PICCの主な対象者

良い適応となる方

  1. 通院などで6日以上の継続した輸液が見込まれる方
  2. “血管がない”と言われている方
  3. 化学療法で長期点滴が見込まれる方
  4. 経口摂取が困難で本人またはご家族様が胃瘻※1・CVポート※2への拒否感が強い方
  5. CVポート※2によるボディイメージの変化が気になる方
  6. CVポート※2又は胃瘻※1造設を検討している段階での栄養状態の低下予防が必要な方

※1 胃瘻:お腹に小さな穴をあけて胃の中にチューブを通して栄養剤を注入する方法
※2 CVポート:首や胸に器具を埋め込み点滴をする方法

当院で適応外となる方

  1. 腕が十分に伸ばせない方
  2. 認知機能が低下している方
  3. 精神疾患をお持ちの方
  4. 自己抜去の恐れのある方
  5. 小児や超高齢な方(16歳未満、90歳以上)

以上の方は当院ではお受けできません。

PICCの選択基準の参考

PICCカテーテルには、従来の中心静脈カテーテル同様に、シングルルーメンからダブルルーメンまでの2種類を用意しています。主に尺側皮静脈を使用しますが、血管の状態によっては、上腕静脈や橈側皮静脈、正中皮静脈を使用することもあります。
併用禁忌薬を使用する場合は、ダブルルーメン以上(手動滴下不可なので輸液ポンプが必須)、高カロリー輸液や維持液のみの場合や抗生剤のみの併用であれば、シングルルーメンです。
採血は、シングル・ダブル共に可能です。

PICCの効果

PICCの利点

  • 長期間治療が必要な場合でも、末梢静脈留置針のように定期的な入れ替えは基本的に必要ないので、何度も針で刺される苦痛がありません。2週間ごとの入れ替えは不要です。
  • 腕から挿入するので、鎖骨や首の付近から挿入する際に発生しうる、肺や大きな血管を損傷するなど命に関わるような合併症は起こりません。
  • 万一自己抜去されても、鎖骨や首の付近からの挿入に比べ、血管径が細いため抜去時の出血はほとんどありません。
  • カテーテルの先端が太い静脈(中心静脈)に位置しているので、刺激の強い薬剤を使用しても血管を痛めることがありません。
  • PICC を用いて薬液投与だけでなく採血も可能です。

挿入の様子

PICCの管理

  • 適切な管理を行うと、長期間使用することができます。
  • カテーテル不使用時には、週に1回の生理食塩液の洗浄のみで管理しています。
  • 消毒は、基本的に週に1回、入浴日に合わせて行うこともできます。
  • 入浴時は、カテーテルを覆っているドレッシング材の上からラップなどを巻き、カテーテルが濡れないように保護してください。

入浴時の保護の仕方

透明ドレッシングで覆う
ガーゼで覆う
ガーゼの上からドレッシング材、ラップなどで覆う

PICCの留意点

  • 長いカテーテルが入るので、時に静脈炎を起こすことがありますが、多くは温めることで改善されます。
  • まれにカテーテルが詰まって使用できなくなることがありますが、薬剤の投与や採血後にしっかりとカテーテルを洗浄することで予防できます。
  • カテーテルが体外に出ているため、ひっかけないように留意することが必要になります。

PICC留置までの流れ

外来受診

一般的診察・問診の上、PICCの適応と判断した場合、同日に上腕エコーを施行し、挿入する血管を決定するとともに、入院日を決定します。
→状況によりPICC留置ができない場合があります。
→全身状態、年齢、治療状況により日帰り入院も可能です。

PICC挿入1泊入院(例)

10:00 ご入院 血圧測定など
13:30 ベッドサイドにてPICC挿入 (挿入後1泊して経過観察)
翌日 止血確認をして挿入部を消毒します。
特に問題なければ、ご帰宅いただけます。

料金(概算)

外来受診日:初回外来 → 診察代+エコー代(約2,000円※)
アフターフォロー外来 → 診察代+創傷処置代(約1,000円※)
1泊入院:15,000円+部屋代72,000円=約87,000円※
※負担割合3割の場合

PICC外来に関するお問い合わせ

ご予約の際は以下の点についてご注意ください。

  • 必ず主治医の許可が得られていること。
  • 主治医からの紹介状を持参すること。
  • 1週間に1回、PICC外来に通院が可能なこと。
  • 通院が出来ない場合、PICCの管理をしてもらえる病院や在宅医が確保出来ること。
  • 当院にて治療中の方は、PICC外来に通院していただくこと。

地域医療連携部にご連絡下さい。受診日をご相談します。
地域医療連携部 電話:03-3402-3081 (月~土 8:30~17:00)

担当者

診療看護師 石山 直子

担当医師

消化器センター長 磯部 陽 医師(責任医師)
外科部長 菊池 潔 医師
消化器外科部長 齋藤 晋祐 医師
消化器外科   瀧山 亜希 医師
消化器内科部長 大久保 政雄 医師
消化器内科部長 斉藤 聡 医師
消化器内科副部長 安積 貴年 医師

サポート医師

循環器内科 山沖 和秀 医師
循環器内科副部長 藤田 大司 医師
呼吸器内科副部長 須藤 英一 医師
女性腫瘍治療・婦人科副部長 鈴木 二郎 医師
泌尿器科部長 小津 兆一郎 医師

参考資料

山王病院PICC外来(PDF)
冊子:PICCとポートについて(PDF)

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