股関節低侵襲治療センター
股関節低侵襲治療センターは2025年4月に開設しました。
概要
股関節の痛みや違和感でお悩みの患者様に対し、保存療法(運動療法や再生医療など)から手術(人工股関節置換術、骨切り術、関節鏡手術など)まで、患者様の状態やご希望に応じた最適な治療をご提案します。
当センターは完全予約制になっています。かかりつけの先生からご紹介いただき、予約をお願いします。
股関節の保存治療
運動療法、再生医療など患者様のニーズに沿った治療法を提案します。
再生医療に関しましては、導入準備中です。現時点でご希望の患者様には信頼のできる施設へご紹介いたします。
股関節の手術治療
①皮膚のしわに沿った小さくて目立たない横方向の傷跡

- しわの方向に傷を作った方が綺麗に治り目立ちにくくなることが知られています。女性患者様の90%以上に横方向に傷をつくっています。小さいだけでなく、なるべく目立たないような傷をつくります。但し、男性の患者様や女性の患者様でも体格や変形の程度により、通常通り、縦方向に傷を作ることもあります。
- 手術創の大きさは、人工股関節置換術では6〜8cm、寛骨臼回転骨切り術では7〜9cm程度です。体格や変形の程度で異なります。


②いろいろな治療法を提案します
一部の病院では人工股関節置換術にかたよった治療法のみが提案されてしまうことがあります。当院では患者様の個々の状態を把握し、患者様の年齢、関節の状態、患者様の生活スタイルや希望に応じた治療法を提案します。
人工股関節置換術
人工股関節置換術とは

人工股関節置換術は、骨盤側の受け皿(臼蓋:きゅうがい)にカップ、太ももの骨(大腿骨:だいたいこつ)にステムと呼ばれるインプラントを設置します。カップにはライナーと呼ばれる軟骨の役割をするインプラントを設置し、ステムの先端にはボールを接続します。ライナーのなかでボールが動くことで股関節の動きを再現します。
人工股関節置換術は、患者様の生活の質もあげる素晴らしい手術ですが、合併症などのリスクもあります。下記の動画は、人工股関節置換術の術前説明動画になります。合併症についても述べていますので興味がありましたらご視聴ください。
MIS最小侵襲人工股関節置換術について
最小侵襲手術MISは2000年代初旬に日本に入ってきた概念で、その手技も大きく進歩しています。最小侵襲手術MISといってもさまざまな手技があります。さまざまな手技のうち、前方進入でおこなう手技を下記の動画で説明しています。興味がありましたらご視聴ください。
当院では、前方進入による最小侵襲手術MISの中でも、組織をより温存した組織間温存法(AMIS)を行っています。
MIS最小侵襲手術の一つである組織間温存法(AMIS)とは?
- 組織間温存法(AMIS)は、1940年代にフランスのJudet医師が考案した仰臥位前方進入(DAA)を改良した手技です。AMISは、2000年ごろにJudet派の医師によって考案された手技で、DAAを工夫し股関節周囲の筋肉や靭帯を温存するだけでなく、筋肉の靱帯への付着部や組織の間に存在する滑液包などの微細な組織も可能な限り保護することを重視しています。
- 当センターの西脇医師がフランス留学中にAMISを学び、2011年に日本へ紹介・導入しました。
- AMISをするには、まずご献体を使った手術手技のトレーニングをうけるか、DAAやALSなどの最小侵襲手術の執刀経験がある上で研修をうけなければなりません。さらに、初めてAMISで患者様の手術をする際には、必ずインストラクターの資格を持った熟練者が手術に立ち会い指導するようなシステムになっています。
- 当初は、西脇医師が日本における唯一のAMISインストラクターとして活動していましたが、2025年1月現在、日本全国でインストラクターは約15名になり、全国で250名程度の医師がAMISで人工股関節手術を行っています。
当センターでは、できる限り低侵襲な手術を心がけて治療に当たっています。残念ながら変形の程度などにより、すべての患者様にAMISを行うことはできません。AMISを適用できなかった患者様でもほとんどの場合、筋温存MIS(DAA)を適用しています。
股関節の痛みで困っている患者様、やりたいことが股関節の痛みで制限されてしまっている患者様は是非ご相談ください。通常、片側の手術であれば術後7日間程度の入院期間を設けていますが、1週間未満の入院でも対応可能ですのでご相談ください。
寛骨臼回転骨切り術
下記の動画は、寛骨臼骨切り術の術前説明動画になります。後述するさまざまな手術法の違い、手術の合併症などについても述べていますので興味がありましたらご視聴ください。
RAO/CPO/SPOの違い
臼蓋形成不全症(寛骨臼形成不全症)に対する寛骨臼回転骨切り術は、骨盤を寛骨臼の形にそって骨切りし移動させ、骨頭の被覆を多くする手術です。寛骨臼回転骨切り術(RAO)がポピュラーな手術方法ですがRAO以外に同様の手術方法としてCPOやSPOがあります。
- RAO:身体の横から股関節の周りの骨を露出してノミを入れて骨切りします。
- CPO/SPO:身体の前から骨盤の中を展開して、そこから外側に向かって骨を切ります。


骨を切ります
(イラストはCPOの骨切り)
CPO/SPOのメリット
- RAOと比べ、股関節周囲の筋肉を切ったり剥がしたりする量が少なく、回復が早くなります。
- 皮膚切開はRAOと比べ小さな傷ですみます。通常、縦の皮膚切開で行いますが、当院では殆どの女性患者様に対し横方向の傷(綺麗で目立たない傷)で手術を行っています。
CPOとSPOの違い
- 骨の切り方が異なります。SPOは股関節の内側の骨をわずかに残して骨を切ります。
- SPOはCPOよりも筋肉に与える負担が少なく矯正後も骨盤が安定しています。
- CPOではSPOよりも大きな矯正が可能です。
- 当センターでは、殆どの症例をSPOで対応し、大きな矯正が必要な場合にはCPOを行っています。

筋肉を切らない低侵襲な進入法
- CPOやSPOは骨盤の内側から骨切りをします。
- 骨盤の内側を展開するために、従来の進入法では小さな範囲ですが筋肉を一部切離し、表層の骨を一部切って深部(骨切り部)を展開していました。
- 当院では、筋を全く切離せず温存し表層の骨を切らない縫工筋内側筋間進入で、CPOやSPOを行っています。
股関節鏡手術
股関節鏡という小さなカメラを関節内に入れて、そのカメラの映像を見ながら関節内の治療を行います。1.5cm程度の小さな傷を2〜3カ所作成します。筋肉への負担も少なく手術後の回復が早いことが特徴です。主に股関節唇損傷などが関節鏡での治療の対象になります。
センター長略歴
センター長 西脇 徹
- 1998年 慶應義塾大学医学部卒、慶應義塾大学整形外科入局
- 2009年 SPORTSMED-SA(オーストラリア)、オタワ大学(Arthroplasty clinical fellow)、日仏整形外科学会 交換研修によりフランス留学
- 2013年 慶應義塾大学医学部 整形外科助教
- 2016年 慶應義塾大学医学部 整形外科 専任講師
- 2018年 静岡赤十字病院 整形外科部長・四肢関節再建センター センター長
- 2025年 順和会 山王病院 股関節低侵襲治療センター センター長
学会等 役職
- 日本人工関節学会 評議員
- 日本股関節学会 学術評議員
- 日仏整形外科学会 交換研修委員
- 変形性股関節症診療ガイドライン(改訂第3版)策定委員
- 診療・予約のお問い合わせ
- 03-6864-0489 電話受付時間:日・祝・年末年始を除く8:30~17:30