新・リウマチ歳時記 Vol.22(2021.5.1)

2021年05月01日 新・リウマチ歳時記

コロナワクチン接種が始まりました

5月になり、新緑が涼風に揺れる、最も過ごしやすい季節になりました。楽しいはずのゴールデンウィークですが、今年も「ステイ・ホーム」を強いられて、辛い休日が続くだけの週になりそうです。私は昨年生まれた孫の顔を見に九州に行く予定をしていましたが、残念ながら断念しました。鬱々とする気分のためか、季節の移ろいを楽しむ余裕がなくなっているように思います。悠久の自然は変わらず、我々の網膜に映る自然は変わらないはずなのに、我々の脳に投影される自然は、何となく色褪せているように思います。季節の移ろいを、鮮やかな色彩と共に楽しめる日々に戻れる日を望むばかりです。

日本でもやっとワクチン接種が始まりました。山王病院は港区の基本型接種施設ですので、ワクチン接種が4月15日から開始され、私は一番最初に打っていただきました。筋肉注射ですが、ちょっと痛いと思っただけであっという間に終わりました。注射部位の筋肉は2日ほど痛みましたが、その後は何ともありません。発熱した人が少しいたようですが、ほとんどの人は疼痛以外の副反応はありませんでした。3週間後の5月6日に2回目を接種する予定です。他の医療機関からの情報では、1回目より2回目のほうが副反応は多いようで、発熱が20%、倦怠感が50%程度ありましたが、重篤なアナフィラキシーはめったにないようです。ただし2回接種しないと十分な効果がないようですので、可能な限り2回の接種を勧めます。1回目に発熱などがあった人は、2回目の注射の前に解熱剤のアセトアミノフェン(カロナール錠)を飲んでおくと良いと思います。
ワクチンの接種が進んでいる国では、感染の広がりが抑えられているとの報道が増えています。コロナウイルス対策として有効な手段であることは間違いなく、専門家は誰一人としてワクチン接種に反対していません。皆さんもワクチン接種のお知らせが来たら、前向きに申し込むようにお願いします。

質問が多いワクチン接種と病気やお薬の関係です。以前の繰り返しですが、念のために書きます。

  1. 原則的に誰でもワクチンは打てます。リウマチなどの自己免疫疾患をお持ちの患者さんも打てます。過去に予防接種で熱が出たとか、腕が腫れた人も受けられます。花粉症も、蕁麻疹も卵アレルギーも問題ありません。降圧剤やコレステロールを下げる薬など一般的な薬剤は、通常通り服用しながらワクチン接種を受けられます。
  2. ただし、免疫を抑える薬剤を服用している場合は注意が必要です。免疫の働きを抑えていると、ワクチンを打っても体内に十分量の抗体ができず、ワクチンの効果が弱まる可能性があります。
  • 副腎皮質ステロイドや一般の抗リウマチ薬は、休薬の必要はありません。
  • メトトレキサート製剤(リウマトレックス、メトレートなど)は、ワクチン注射後の1週間は休薬し、次の週から通常に服用してください。
  • JAK阻害薬(ゼルヤンツ、オルミエントなど)は、ワクチン注射後1週間は休薬し、次の週から通常に服用してください。
  • 他の免疫抑制薬(プログラフなど)や生物学的製剤(エンブレル、アクテムラなど)は、通常通りで良いとされてはいますが、念のためワクチンを打つ前日、当日、翌日の3日間は使わないほうが良いでしょう。

具体的な薬剤については、主治医に確認し、不安があればご相談されることをお勧めします。

春の海ひねもすのたりのたりかな 与謝蕪村

こんな気分に早くなってみたいと、心より思います。皆様もくれぐれもご自愛のほど。

山王メディカルセンター院長 リウマチ・痛風・膠原病センター長
山中 寿

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