眼内コンタクトレンズ=ICL(Implantable Collamer Lens)は、レーシック(LASIK:laser in situ keratomileusis)が最初に報告された1990年より以前の1980年代に開発が行われた、実は歴史のある手術法です。国内では当センター長の清水が1997年に初めて導入し、2002年の臨床治験を経て2010年に厚生労働省の承認をうけました。しかし、従来のICLは房水循環(目の中の水の流れ)が悪くなることから、約1~2%白内障が進行するというリスクがありました。この合併症をなくすべく清水は、レンズの中央に極小の穴をあけたHole ICL(ICL KS-AquaPORT)を考案・開発し、2007年に世界で最初の移植を行いました。その後、このHole ICLは房水循環が改善されたことから白内障のリスクが低下し、現在世界80か国以上で承認され、2022年6月時点で累計200万枚を達成し、世界的スタンダードとなっています。
メリットは、術後の結果に不満や合併症があれば、レンズを取り出し元の状態に戻すことができること、幅広い度数に対応できることです。レーシックでは、近視度数が強い場合、角膜をたくさん削る必要があり、手術の難易度が高くなります。その結果、術後誤差が大きくなり、近視が再発したり、ドライアイの原因になったりすることがありました。また、一度削った角膜は元にもどすことはできません。ICLは度数が強くても軽くても、一枚のレンズを目に入れる同じ手術方法のため、難易度に差が生じることはありません。また、将来白内障になっても従来同様の白内障手術を行うことができます。
現在の屈折矯正手術は以下の3つのアプローチに分けられます。
※術者はICL認定講習を受講し、認定医インストラクター医師の立会いのもとで手術を行い、ICL認定を取得しています
ICL研究会はICLを通じて日本における屈折矯正手術を再構築し、次の世代にこの有用性を伝え、より安全で正確な手術を確立することを目的に設立しました。
学会や研究会での発表、ガイドラインの作成や共同研究などを中心に、最新情報の共有と情報交換を行っています。
当院のセンター長 清水は、世話人代表として研究会の活動に尽力しています。
山王病院、北里大学病院にて2016~2022年にHole ICL(ICL KS-AquaPORT®)挿入後経過観察可能であった2192例4311眼
性別(女性率) | 58.6%(2526/4311) |
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年齢 | 32.8歳(17~63歳) |
屈折度数 | -6.29(+4.00~-22.00D) |
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乱視度数 | -1.08(0~-13.50D) |
術後早期(術直後~1週)
眼圧上昇 | 0% |
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感染症 | 0% |
術後中期~長期(術後1週~7年)
感染症 | 0% |
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併発白内障 | 0% |
追加矯正手術 ICL度数交換 乱視矯正手術 |
1.4%(4/292) 0.7%(2/292) 0.7%(2/292) |
我々が手術を行った2007年~2015年までの間、通常の成人(外傷眼や50歳以上を除く)に対するHole ICL手術を行った中では、感染症や眼圧上昇、白内障が進行した患者様はいませんでした。
後に追加で手術を要したのはわずか2名(4眼)で、このうち、ICL度数交換したのは1名(2眼)でした。その方はすでに老眼をきたしており、当初は少し近視を残して老眼を緩和させたいという希望でしたが、その後もう少し遠くが見たくなったことで手術を行った方でした。このように、後から度数を変えたりすることも可能です。