眼内コンタクトレンズ = ICL(Implantable Collamer Lens)の歴史は、レーシック手術より古く,最初のタイプのレンズは1980年代後半から使用されていました。国内では1997年に、当センター長の清水が初めて導入し、臨床治験を経て2010年に厚生労働省の承認をうけました。しかし、従来のICLは房水循環(目の中の水の流れ)が悪くなることから、約1~2%白内障が進行するというリスクがありました。このリスクをなくすべく清水は、レンズの中央に極小の穴をあけたHole ICL(アイシーエルKS-AquaPORT®)を発案・開発し、2007年に世界で最初の移植を行いました。Hole ICLは、2011年に欧州で承認され、2014年には厚生労働省の承認を受けた日本発のレンズです。現在、世界85か国以上で承認され、世界的スタンダードとなっています。レンズの素材のコラマーは、生体適合性が高く、コラーゲンを使用した天然由来であることも特徴のひとつです。
メリットは、術後の結果に不満や合併症があれば、レンズを取り出し元の状態に戻すことができること、幅広い度数に対応できることです。レーシックでは、近視度数が強い場合、角膜をたくさん削る必要があり、手術の難易度が高くなります。その結果、術後誤差が大きくなり、近視が再発したり、ドライアイの原因になったりすることがありました。また、一度削った角膜は元にもどすことはできません。ICLは度数が強くても軽くても、一枚のレンズを目に入れる同じ手術方法のため、難易度に差が生じることはありません。また、将来白内障になっても従来同様の白内障手術を行うことができます。
デメリットは、レンズのサイズが限られていることですが、Hole ICLは、レンズの固定方向に制限がないので、固定方向とサイズの組み合わせによって、適切なサイズ選択をすることができます。
現在の屈折矯正手術は以下の3つのアプローチに分けられます。
※術者はICL認定講習を受講し、認定医インストラクター医師の立会いのもとで手術を行い、ICL認定を取得しています
ICL研究会はICLを通じて日本における屈折矯正手術を再構築し、次の世代にこの有用性を伝え、より安全で正確な手術を確立することを目的に設立しました。
学会や研究会での発表、ガイドラインの作成や共同研究などを中心に、最新情報の共有と情報交換を行っています。
当院のセンター長 清水は、世話人代表として研究会の活動に尽力しています。
山王病院、北里大学病院にて2016~2022年にHole ICL(ICL KS-AquaPORT®)挿入後経過観察可能であった2192例4311眼
性別(女性率) | 58.6%(2526/4311) |
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年齢 | 32.8歳(17~63歳) |
屈折度数 | -6.29(+4.00~-22.00D) |
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乱視度数 | -1.08(0~-13.50D) |
術後早期(術直後~1週)
眼圧上昇 | 0% |
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感染症 | 0% |
術後中期~長期(術後1週~7年)
感染症 | 0% |
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併発白内障 | 0% |
追加矯正手術 ICL度数交換 乱視矯正手術 |
1.4%(4/292) 0.7%(2/292) 0.7%(2/292) |
我々が手術を行った2007年~2015年までの間、通常の成人(外傷眼や50歳以上を除く)に対するHole ICL手術を行った中では、感染症や眼圧上昇、白内障が進行した患者様はいませんでした。
後に追加で手術を要したのはわずか2名(4眼)で、このうち、ICL度数交換したのは1名(2眼)でした。その方はすでに老眼をきたしており、当初は少し近視を残して老眼を緩和させたいという希望でしたが、その後もう少し遠くが見たくなったことで手術を行った方でした。このように、後から度数を変えたりすることも可能です。