ネットと新聞
暑さ寒さも彼岸まで。今夏は本当に暑い夏で、全国の平均気温は史上最高だったそうですが、本当にお彼岸の週になると、急に秋風が立ったように涼しくなりました。春秋のお彼岸は、各々春分の日と秋分の日の前後3日間を指しますので、天文学的にも気象学的にも、冬から春へ、夏から秋への節目です。そして今年も、お約束通りに季節が動き、秋がやってきました。秋は、最も過ごしやすい季節でもあり、食欲の秋でもあります。「天高く馬肥ゆる秋」ですが、「柿が赤くなると医者が青くなる」という表現もあります。旬の食材が多くて、食欲が増すから健康になる、という意味ですが、現代では、「柿が赤くなると医者が汗をかく」ではないかと思います。飽食の時代で、肥満から生じる生活習慣病が多いですからね。美味しい旬の食材も、食欲に任せて食べるのではなく、腹八分目を心がけてください。
先月号で、早寝早起きの生活をしていると書きました。早朝にゆっくり新聞に目を通す時間が確保できたことで、気づいたことがあります。それは、ネット情報と新聞情報の違いです。最近では、情報はすべてネットから得るという人が増えて、新聞を読まない人が多いようですが、あらためて新聞に目を通すと、まさに刮目する発見があります。「エコーチェンバー」という言葉があります。SNSで仲間内の情報発信をすると、まるでこだまのように自分と似た意見ばかりが返ってきて、自分の意見が正しいと思い込んでしまう現象を指します。特に、最近のインターネットのサイトは、googleなどの検索サイトがアルゴリズムを提供していて、利用者が好みそうな情報を優先的に表示します。その結果、気が付かないうちにネットの画面には自分が知りたい情報のみが並んでいて、本当に重要な情報は目に触れなくなってしまいます。「人は、見たいと欲する現実しか見ない」と言ったのは、紀元前のユリウス・カエサルですが、この言葉は、2000年後の現代にまさに当てはまります。多様性の時代と言いながら、多様な意見に接しないと、画一的な思考に陥って、意見が分断する原因になっています。
おまけに、例えばYahooの見出しには8件のトピックスが並んでいますが、外交上の大問題も、芸能人の離婚話も、扱いは同列です。これでは、社会のなかで何が重要で、何が重要でないかの判断ができません。その点、新聞は社会的に重要な問題を1面に取り上げますし、見出しも大きく、紙面も広く取りますので、目に見える情報量で、問題の重要度を認識できます。現在の社会で何が生じているか、何が重要かを広く俯瞰するには良い媒体だと改めて思います。また、ネットは見出しをクリックしないと記事が読めませんが、新聞は見出しと記事を同時に読めますので、手間が省けます。ちょっと面倒くさがりの私には好都合です。
ただし、新聞にも落とし穴あり、新聞社によって主義主張が異なるので、A新聞を読んでいる人は、A新聞の主張に染まり、B新聞を読んでいる人はB新聞の主張に染まる傾向があります。ずいぶん前に、全国紙2紙を毎日購読していたことがありましたが、主張が真逆なのにとても驚きました。本当は2紙以上の新聞に目を通すことが大切なのでしょうが、いくら早起きしても、そこまでの余裕はないですね。フェイクニュースが多い現代では、情報の確かさは情報源の正しさに依存します。だからこそ新聞社は公正な目をもって記事を書いていただかないといけない。不確かなネット情報に依存せず、きちんと裏付け取材をして執筆していただくことを、新聞各社に是非ともお願いしたいところです。
朝早く起きて新聞に目を通すと、一日が良いスタートを切れるような気がします。やはり早起きは三文の得。皆さんも早寝早起きで健康的な生活をお送りください。