新・リウマチ歳時記 Vol.50(2023.9.1)

2023年09月01日 新・リウマチ歳時記

早起きの勧め

暑い夏です。9月になっても最高気温30℃越えの日々が続くようで、きびしい残暑になりそうです。私たちは仕事のために日中ずっと空調の効いた室内にいますが、仕事で外回りの方々は本当に大変だろうと思います。先月も書きましたような熱中症対策を、是非励行していただくようにお願いいたします。

私は、最近、早寝早起きの生活を送っています。朝早く起きて、まず窓を全開にすると、意外に涼しい風が、秋の虫の音を運んできて、季節の移ろいを感じることができます。次に体重測定、それから水分をたっぷりとって、5分間はストレッチをすると、体も頭も整いますので、出勤までの時間、新聞を読んだり、メールの処理をしたり、書き物をしたりして有意義に過ごしています。夜型の生活を送っていた数年前よりは、一日中、体調が良いように思います。

朝型の生活で思い出すのは、以前、鹿児島大学の教授をされていた納光弘先生です。講演をお聞きした時、先生は夜の9時には就寝し、朝は3時に起きて、趣味の絵画を描いておられるとのことでした。朝の時間は誰にも邪魔されない自分だけの時間だと言われていて、それはそれは素晴らしい絵画をたくさん書いておられました。http://www5f.biglobe.ne.jp/~osame/   その頃、完璧に夜型の生活を送っていた私には、異次元の世界の話のように思えたのですが、今になってみると、早起きの功徳がよくわかります。朝活、早起きは三文の徳、Early bird catches the worm。単に年をとっただけじゃないか、と言われそうですが、三日坊主にならないように続けたいと思っています。

納先生は、自らも公言されている「痛風持ち」で、自らの体験から「痛風はビールを飲みながらでも治る!という本も書かれています。痛風は、主として足の関節が急に腫れ上がって激痛を生じる疾患で、高尿酸血症が長く続いた人に発症します。尿酸値が7.0㎎/dlを超える状謡が長く続くと、関節の中に尿酸の結晶が蓄積し、その結晶が時々痛風発作と呼ぶ激しい炎症を起こします。以前に痛風発作は夏に多いという研究を発表したことがありますが、体の中で作られた尿酸は尿中に捨てられますので、脱水になって尿量が減ると、体の中にたまりやすくなります。痛風発作の既往がある方、尿酸値が高いと言われている方は、暑い日には水分摂取を欠かさないようにしてください。

痛風発作を何度も経験した場合は、体内に相当の尿酸がたまっていますので、生活習慣の改善だけではダメで、お薬を飲んで尿酸値を下げ続ける必要があります。私たちが開発したフェブリク(フェブキソスタット)をはじめ、いくつかの優秀な薬剤がありますので、薬剤を適切に服用して尿酸値を6.0mg/dl以下に維持すれば、ほぼすべての痛風患者さんが痛風発作のない毎日を送ることができます。痛風で悩んでおられる方は、躊躇せず受診していただくことをお勧めします。

私は、医学部の学生だった頃から今に至るまで痛風の研究に関与してきましたので、そのご縁で前述の納先生とも知り合いになりましたが、今になって早寝早起きでも、納先生に学ばせていただいていることに感謝しています。実は、この原稿も朝の心地よい時間の中で一気に書きあげました。残暑が続きますが、今日も有意義な一日にしたいと思っています。皆さんにも早寝早起き、お勧めです。

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山中医師が東京女子医科大学にて2011.8~2019.4に連載した「センター便り」はこちら</