熱中症の予防策をパターン別に解説します
猛暑です。夏は暑いにきまってはいるものの、この暑さはさすがに応えます。
熱中症が話題になることが多いこの頃ですので、熱中症について解説してみます。
人間をはじめとする哺乳類は、恒温動物と呼ばれ、体温を一定に働く仕組みを持っています。毎日の生体の活動で大量の熱が発生しているのですが、生じた熱を外部に放出して一定の体温を維持するシステムがあるからです。そのメカニズムで代表的なのが汗で、汗が蒸発する際に気化熱となって体温を下げます。それ以外に、不感蒸泄と言って、汗ではないが皮膚や呼気から水蒸気として放出される水分喪失が、健常成人で一日に800~1000mlあります。それも体温を下げるのに役立っています。脳の一部である視床下部に体温調節をつかさどるサーモスタットのような神経細胞があり、そこからの指令で、皮膚の血管を拡げたり収縮させたりしています。皮膚の血管が拡張すると発汗量が多くなり、汗が蒸発する時に熱が奪われて、体温が下がります。こうして人間の体温は36~37℃に調節されています。人体は本当にうまくできています。
熱中症を一言で言うと、高温の環境下で体温を維持する機構がうまく作動しなくなった状態、と言えます。どうして起こるのでしょうか?気温が上昇すると、体は汗をかいて体温を下げようとしますが、大量に発汗したのに十分な水分が補充されなければ、体の中は脱水状態になります。また汗は塩分を含みますので、体から塩分が失われると、電解質のバランスが狂ってしまい、めまい、失神、疲労感、頭痛、嘔吐、筋肉のこむらがえりなどが起こります。
それでは、熱中症はどのように予防すればいいでしょうか?①適切に体を冷やすこと、②水分を補給すること、③適切な量の塩分を補給すること、の3つです。①、②は、どんな状態でも勧められるものですが、けっこう難しいのが③の塩分補給です。塩分補給も必要なのですが、摂りすぎると血圧が上がったり、腎機能を低下させたりします。特に高血圧や心臓病、腎障害のある人は、要注意です。
では、どうすればいいか。パターン別に書いてみます。
1.暑い日だけれど、涼しい室内にいて、汗をかいていない状態
この状態では、水分だけを補充すればよいので、水やお茶がお勧めです。塩分の入ったスポーツ飲料は不要ですし、ましてや塩分の多い経口補水液(OS-1など)は要りません。塩分取りすぎは避けるべきです。喉の渇きが生じる前に、水分を摂るように心がけてください。
2.暑い日で、ある程度汗をかいた状態
この状態では、汗で塩分が喪失しますので、水分摂取に加えて、ある程度の塩分補給も必要です。スポーツ飲料は0.1~0.2%の塩分と糖分を含みます。腕をペロッと舐めてみて(お行儀が悪くてスミマセン)、塩辛く感じたら、スポーツ飲料を飲むと良いと思います。塩分の多い経口補水液(OS-1など)は要りません。
3.めまい、頭痛、こむら返りなどの熱中症症状が出た場合
かなりの塩分不足状態になっていると思われますので、水分と共に塩分補給が必要です。この状態では、塩分の多い経口補水液(OS-1など)の出番です。OS-1には500ml中に1.5gの塩分が含まれています。それでも改善せず、失神、嘔吐等の症状が出れば、病院に行って点滴を受ける必要が出てきます。
テレビなどで、熱中症には水分と塩分と盛んに言っていますが、塩分の取り方は意外に難しいのです。血圧の高いご老人が、クーラーの効いた涼しい室内で、熱中症予防に良いと思って、塩分の多い経口補水液を飲むのは、医学的には間違いです。是非とも避けてください。
あとひとつ、熱中症にならないためには、体調管理が必要。私は、早寝早起きを心がけて、涼しい朝の時間を有効に使うように心がけています。皆様も元気で暑い夏を乗り切ってください。