新・リウマチ歳時記 Vol.16(2020.11.1)

2020年11月01日 その他

三密とは言うけれど

11月になって急に気温が下がってきました。まさに秋本番。これから紅葉のシーズンを迎えます。私の勤務する山王メディカルセンターのほど近くに有名な神宮外苑の銀杏並木がありますが、イチョウがきれいに色づく11月下旬は、例年、多くの人で混雑します。今年ばかりはコロナ禍の影響で、例年よりゆったりとした気分で銀杏並木を鑑賞できそうです。
「年年歳歳花相似たり、歳歳年年人同じからず」
コロナがあろうとなかろうと、オリンピックがあろうとなかろうと、秋になれば銀杏は色づく、春になれば桜も咲く。自然の理は、人間の思惑や行動には全く無関心です。諸事に右往左往させられている我々からすれば、悠久の年月を過ぎても変わることのない自然には、畏敬の念を抱くとともに、大きな安心をも感じます。

「三密」。新型コロナの感染拡大を防止するために、本年3月に提唱された表現です。ソーシャルディスタンスを保ち、感染拡大を防ぐわかりやすい標語として、広く国民にいきわたりました。毎年、日本漢字能力検定協会が年末に発表する「今年の漢字」ですが、私は「密」が選ばれるのではと予想しています。
その三密ですが、密閉、密集、密接。その3つが重なる場所ではクラスターが発生しやすいとして、三密を避ける対策が立てられ、大きな効果を上げました。

ただし、三密は絶対的なものではなく、誤解も生んでいます。コロナウイルスの感染様式は、ほとんどが飛沫感染です。大声を出したり、咳やくしゃみをした時に、ウイルスが飛沫に乗って拡散します。その飛沫を吸い込んだり、飛沫が着いた手すりやドアノブを触った手で口や目を触ると、ウイルスが体内に侵入します。

つまり、本当に大切なのは「飛沫の防止」。三密の環境下でも、飛沫が発生しなければウイルスは広がりません。電車の中でも映画館でも、皆が静かにしていれば大丈夫です。避けるべきは、マスクを外しての会食中などに、声を張り上げて談笑したり、口角泡を飛ばして激しい議論をしたりすることです。大リーグの野球中継で、監督が審判に顔を近づけて大声で抗議している場面がなどありますが、あれがいちばんダメでしょう。
逆に、飛沫が発生しない状況なのに、過度に三密を避けているのもおかしいです。例えば、コンビニのレジ前の列であんなに距離を空けることが必要なのか、誰もいない道路でマスクをかける必要があるのか、首をかしげざるをえません。確かに、今年の3月ごろは新型コロナについての知識が不足していましたが、現在ではいろんなことが分かってきています。正しい知識で、正しく予防することを気に留めていただければと思います。

なお、前述しました、「今年の漢字」ですが、どうか「菌」を選ばないでくださいね。ウイルスは「菌」ではありません。「コロナウイルスを除菌する」などという誤解に満ちた表示を時々見かけるものですから、今から心配になっております。

山王メディカルセンター院長 リウマチ・痛風・膠原病センター長
山中 寿

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