新・リウマチ歳時記 Vol.46(2023.5.1)

2023年05月01日 新・リウマチ歳時記

本当にコロナ明けなのかな?

ゴールデン・ウィーク真っただ中です。あいにく天気はイマイチのようですが、寒くもなく、暑くもなく、花粉も減り、黄砂も少なくなりました。窓をいっぱいに開けて、新緑を渡ってきた清々しい風を胸いっぱいに吸い込みたいと思います。もちろん、そんな時には無粋なマスクは無用ですよね。

連休明けの5月8日からは、新型コロナも感染症法上の2類相当から5類相当に引き下げられて、季節性インフルエンザと同じ扱いになります。そのこともあって、日本全国で「コロナ明け」の機運が充満しています。連休を使用して旅行に出かける人も昨年より倍増しているとの報道がありますし、街は外国人観光客であふれています。一方では、新型コロナの新規感染者数は3月中旬を底にして徐々に増加傾向。この1か月間はずっと前週を上回っています。本当にこんな状況なのにコロナ明けでいいの?と疑問に思う人も多いと思います。しかし、現在ではコロナウイルス自体が当初よりかなり弱毒化してきていて、万一罹っても重症化する人はほとんどいなくなりました。つまり以前のように恐ろしい病気ではなくなっているのです。
振り返ってみれば、新型コロナが流行し始めた3年前の時点では、いろいろなことがわかっていない中で肺炎を起こして亡くなる人も多く、危機感を煽るような報道ばかりで、皆が不安におびえていました。その頃から、私はこの歳時記の中で、新型コロナからの出口戦略は3つあると何度も書いてきました。①感染リンクの途絶、②ウイルスの変異による弱毒化、そして③ワクチンです。最初は、①感染リンクの途絶で頑張るしかなかったのですが、②ウイルスの変異による弱毒化が進み、③ワクチン接種も進んで、新型コロナの流行もようやく出口に近づいたようです。季節性インフルエンザと同じで、ウイルスがなくなることはなく、今後もある程度の感染者は毎年出るだろうけれど、怖い病気ではないという状況が予想されます。たぶんインフルエンザワクチンと同様に、コロナワクチンを毎年接種することになると思いますが、いずれにせよ2020年来のコロナ騒動は、いったんお開き、と言う状況ではないかと思います。

この3年間、社会の様々な活動が大きく制限されました。皆さんの日常生活や仕事にも多大な影響があったと思いますが、急速に元に戻りつつあります。医学の世界でも、この3年間はネットを用いた開催しかできなかった学術集会が復活しており、先週は日本リウマチ学会が4年ぶりに福岡で開催されました。私も3日間参加し、新しい知識もたくさん仕入れましたが、何よりうれしかったのは、元気で活躍されている旧知の人々と、久々の交流ができたことでした。インターネットを通しても顔は見れるし話もできる時代になりましたが、実際に会って話をすることには遠く及ばない、満足度はたぶん10倍も違うと、つくづく思いました。
「朋有り遠方より来る、亦楽しからずや」。
地理的な距離だけでなく、時間的にも遠く離れていた友との交流は、まさにこの論語の一節そのものでした。コロナ明けの今月からは、皆さんの生活の中でも、この一節を思い出す場面が増えることと思います。

リモートワークを余儀なくされた人も多かったコロナ禍の3年間でしたが、外来診療では、診察室で対面してお話し、体に触れて診察することが避けられません。コロナ禍でオンライン診療が発展するように言われた時期もありましたが、結局は一般化しませんでした。さもありなん、と思います。

新緑の候、一年中で最も過ごしやすい季節を、コロナ明けの開放的な気分の中で味わいたいと思います。

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山中医師が東京女子医科大学にて2011.8~2019.4に連載した「センター便り」はこちら