真夏の夜の夢?
暑い夏です。私は、比較的暑さには強く、太陽がじりじりと肌を焼く天気は嫌いではありませんが、最高気温38℃とか40℃はさすがに勘弁してほしいと思います。各地の地方気象台の発表する気温は、直射日光を避ける百葉箱の中で測ったものですので、直射日光の指す炎天下ではもっと高いはず、更に都会はコンクリートの照り返しも加わって、ヒートアイランド現象と呼ばれる高温地帯になっていますので、都心部の気温は気象庁発表よりも大幅に高いことは間違いありません。
この猛暑。地球温暖化の一環だと思いますが、その原因の一つは人類の社会活動に伴う温室効果ガスです。つまり私たち一人一人の日常生活に関係していますので、私たちは地球温暖化の加害者であるという責任を感じねばならないのですが、ひとりの人間が自覚して解決する規模の問題ではありません。不謹慎ではありますが、なんとか地球自身が冷えてくれたらいいのにと考えてしまいます。地球という偉大な家主に、借り手である人類が犯した不始末の責任を転嫁するみたいで、誠に心苦しい限りではありますが、地球自体の温度変化が、地球温暖化を阻止してくれる可能性があるのかどうか、調べてみました。
地球は、47億年前に誕生して以来、大きな温度変化を繰り返してきました。氷河期と呼ばれる低温の時期が何度かあったのですが、最後の氷河期は人類が誕生した頃のことで、その後は大体、今の気温が続きました。次の氷河期が来るのは、今から5万年先のことだと言われていますが、時々、地球の気温が低下する時期があり、実際、17世紀から18世紀にかけては、地球全体の気温が少し低下する小氷期であったようです。その頃は、太陽活動が低下した時期だったことに加えて、地球規模の大きな火山噴火による噴煙が大気を覆ったことで、気温が低下したと推測されています。その頃、日本は江戸時代。冷夏のために何度も飢饉が起きたのは、この小氷河期の影響が考えられています。つまり小氷河期になると、農作物の収穫も減るし、悪いこともいろいろ起きますから、地球温暖化の解決策として小氷河期の到来を期待するのは、いうなれば「悪魔に魂を売るがごとき行為」とも言えます。ただし、ある研究によると、2030年代から太陽の活動が低下し始めて、結果として地球の気温は低下するとの予測もあるようですから、荒唐無稽の話ではありませんが、現実的には、寝苦しい熱帯夜に見る「真夏の夜の夢」レベルですね。我々は暑さ対策を続けるしかなさそうです。
人類は恒温動物ですので、体温を一定に保つために、気温が上がると汗をかいて、その気化熱で体温を下げるシステムを持っています。熱い地域に住む人種は、寒い地域に住む人種より汗腺の数が多く、汗をかきやすいことも知られています。実に合理的ですね。ただし、そのシステムが破綻するのが熱中症。汗の元になる水分が不足すると、脱水にもなるし、体温も上がります。気温が高くなれば水分を補給する、汗をかいたら塩分を少し補給する、熱中症かなと思ったら、まず体を冷やすことなど、日頃から注意をお願いします。
2024年8月1日
医療法人財団順和会 山王メディカルセンター院長 リウマチ・膠原病内科部長
山中 寿