寒い時に指が真っ白になる?
寒い日が続きます。10年に一度の最強寒波といわれており、東京でも最低気温が氷点下の日が続きました。でも、最近ではヒートテックなどで衣類の暖房性能が飛躍的に向上していますし、便利な使い捨てカイロなどもドラックストアの店頭にたくさん並べられていて、寒い冬も以前ほど怖くなくなりました。厚着とか着ぶくれとかの言葉が死語になりそうです。ありがたいことです。
この寒波は、地球温暖化の影響で、偏西風の流れが変わって北極の寒気が到来した結果とのことですが、地球が温暖化しているのに寒くなるってどういうこと?と思ってしまいます。地球温暖化と言う言葉が一般化しましたが、それよりは、地球規模の気候変動と言ったほうが正確なのでしょう。そして、何より大切なことは、この気候変動の原因は、われわれ人類の活動の結果であることを我々は認識するべきだということです。個人個人が意図したことではないにせよ、結果として我々が地球環境を破壊し続けてきたことの報いのひとつが寒波襲来であり、ひとつの「因果応報」なのだと理解するべきなのだと思います。
寒さに関係した医学的な話題をひとつ。私が専門とするリウマチ膠原病の病気の中で、寒い時期に特徴的な症状として「レイノー現象」があります。これは手指の皮膚が急に白く冷たくなり、ひどいときは蒼白になりますが、温めると赤みを帯びてきて、やがて治っていく症状です。普通は温めれば数分で元に戻ります。指1本に出ることもあれば、数本の指に出ることもあります。手袋なしで寒い戸外に出たり、冷蔵庫の冷凍室に指を入れるとるとさっと指の色が変わったりしますが、精神的に緊張したり、ぞっとする感じと共に指が白くなる人もいます。このレイノー症状は、膠原病と言われる病気に特有の症状で、レイノー現象があれば、何らかの膠原病がある可能性を考えたほうが良いと思います。そして膠原病の中でも、強皮症、混合性結合織病、全身性エリテマトーデスなどの病気で出ることが多く、関節リウマチなどではほとんど起きません。ひどくなると指の爪の根元に点状出血という小さな斑点が出てきたり、もっとひどくなると指先に潰瘍ができてきたりします。温めれば治る程度のレイノー現象であれば、治療の必要はありませんが、よほどひどい患者さんでは、末梢血管を拡張する薬剤を使うこともあります。寒い時期だけ血管拡張剤を服用していただくこともあります。レイノー現象がある人は、予防のために寒い時期は手袋をはめるなどして指先を温めることも大事ですが、体全体を冷やさないことも大事ですので、特に寒波襲来などの予報があれば、寒さ対策をよろしくお願いいたします。
2月に入り、まだ寒い時期が続きますが、あと1か月半もすれば桜便りを聞く季節になります。
冬来たりなば春遠からじ。
実は、この語源は英国の詩人の詩の一節だそうです。If winter comes, can spring be so far?
寒い時期ももうしばらくの我慢、きっと暖かな春がやってくる。コロナ禍にも当てはまる表現だと思いました。
山王メディカルセンター院長 リウマチ・痛風・膠原病センター長
山中 寿