新・リウマチ歳時記 Vol.41(2022.12.1)

2022年12月01日 新・リウマチ歳時記

夢と睡眠と

この1週間、FIFAワールドカップサッカーの話題で持ち切りでした。ドイツ戦で‘’予想外‘’の勝ちを得たことで世間が一気に沸騰し、コスタリカ戦で‘’予想外‘’の敗戦を喫したことで、世間は一気に急冷してしまいました。日本人も、ことサッカーに関しては、本当に熱しやすく冷めやすいんだと思います。この記事を書いている11月30日には、予選リーグ最終試合スペイン戦の結果はわかりませんが、勝敗にかかわらず、しばらくの間、夢を見させてもらった日本代表の選手やスタッフの皆さんに、大いに感謝したいと思います。

今、「夢」と書きました。この場合の夢は、「実際には有りそうにも思われないが、万一 実現すればいいなあと思っている事柄」(新明解国語辞典)のことですが、本当の夢といえば、我々が睡眠中に見る夢のことです。同じ新明解国語辞典によると、「睡眠中に生活経験のごとく生起して目覚めると同時にはかなく消える、一種の幻覚」です。睡眠には、睡眠が浅いレム睡眠と、深いノンレム睡眠を繰り返すリズムがありますが、夢を見るのはレム睡眠の時。すなわち睡眠が浅くなった時に、脳の一部が覚醒して、断片的な記憶がバラバラと流れ出している状況と言えます。つまり、あまりにも夢を見るのであれば、レム睡眠の時間が長く、眠りが浅くなっている可能性があります。

人間は、不思議なことに毎日何時間かは眠らないと健康を保てませんが、睡眠はすべての哺乳動物のみならず、爬虫類や魚類、ショウジョウバエにまで確認されています。何故、動物には睡眠が必要なのか、ずっと議論され続けていますが、まだ謎ばかり。ただ、動物の活動に必須であることは間違いありません。ともかく、眠らないと翌日に体がもたないので、何とか眠ろうとするのですが、どうも眠れないという人が多いようです。そのために睡眠導入剤を毎晩服用したいという人が結構おられるのですが、これは要注意。睡眠導入剤を連日服用している人は、服用していない人に比べてアルツハイマー型認知症の発症が1.5倍多いという研究結果もあります。また、夜に起きてトイレに行く時に、体がふらついて転倒するリスクも高いので、少なくとも安易な睡眠薬の服用は避けるべきです。

まずは、スムーズに眠りに導く環境づくりが大切でしょう。就寝前は脳をできるだけリラックスさせるために、テレビやスマホ、PCの画面を見ない。静かな音楽をぼーっと聴く。寝る前の軽いストレッチもお勧め。夕食後のカフェインは避けること。少しのアルコールは入眠を助けますが、飲みすぎると睡眠が浅くなります。そして、どうしても眠れない時も焦らないこと。目を閉じて、頭を空っぽにするだけで脳は休んでくれますし、身体も休息が取れます。睡眠導入剤に関しては、できるだけ連用しないこと。連用されている場合は、できるだけ服用を減らすようにしてください。今夜だけはぐっすり眠りたいという日に限って服用する程度にとどめるのも良いと思います。幸いなことに、私は昔から寝つきがとても良くて、目を閉じてから1分以内に意識を失ってしまいます。上に書いたような睡眠環境をきっちり整えているためかと思います。ただし、寝つきが良くても、楽しい夢が見られるか、悪夢にうなされるかは別問題。それは日頃の行い次第なのでしょうかね。

12月になり、コロナあり、インフルエンザありの中での社会活動の活性化はなかなか難しい問題ですが、各自が感染対策を怠りなく行って、師走を楽しんでいただけますように、お祈りします。

山王メディカルセンター院長 リウマチ・痛風・膠原病センター長
山中 寿

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