体重測定の大切さ
10月下旬になって急に気温が下がりました。外苑前の銀杏も色づき始め、「季節が動いた」という擬人的表現がしっくりくる季節。通勤の人々の衣服を見ても、早々とダウンコートを着ている人から、まだ薄着で頑張っている人までまちまちで、人々の季節感の違いを見て楽しめる時期でもあります。
私は、関節リウマチや痛風などのリウマチ性疾患を中心に診療していますが、山王メディカルセンターでは予防医学センター長として人間ドックの受診者さんもたくさん診察しています。人間ドックを受診する多くの人々が抱える問題のひとつは、体重が減らない、肥満が改善できない、という事ではないかと思います。
肥満は、高血圧、高コレステロール血症、糖尿病、高尿酸血症などを起こしますし、その結果として心筋梗塞や脳卒中などの動脈硬化性疾患を引き起こします。飽食の現代社会では、最大の健康リスクと言ってもいいのではないかと思います。
肥満度の判定には、国際的な標準指標であるBMI(Body Mass Index)=[体重(kg)]÷[身長(m)2]が用いられています。BMIが25以上であると定義づけられていますので、皆さんも肥満に当てはまるかどうか、ぜひ計算してください。ちなみに私のBMIは25以下であり、余裕でセーフでした。
肥満は、体が使うエネルギー以上に食事を食べすぎることによって、余剰なエネルギーが脂肪となって体内に蓄積されて起こります。つまり、運動不足か食べ過ぎ、多くはその両方でしょう。脂肪の付き方に、内臓脂肪型と皮下脂肪型があると言われますが、これば腹部CTで検査するとすぐにわかります。おおざっぱに言うと、内臓脂肪型は運動不足、皮下脂肪は食べすぎです。その証拠がお相撲さんの肥満で、お相撲さんはすごく運動して、すごく食べますので、内臓脂肪はほとんどないけれど、皮下脂肪がたっぷりついています。肥満で悩む多くの人々は、運動不足だと言いますが、多くの場合それは自分への言い訳であり、食べ過ぎによる皮下脂肪がいっぱいついています。
体重を落とすために必要なことは、まず毎朝体重を測ることです。体重計に乗らないで体重を減らそうとすることは、経営者が財務表を見ないで赤字を減らそうとするのと同じことと思います。まず体重計に乗って現状を認識すること。それも朝がお勧めです。夜、風呂上がりの体重は、その日に食べた量とか、汗をかいた量でかわりますから変動が大きい。おまけに夜の体重を見てヤバイと思っても、寝ているうちに忘れてしまいますよね。朝起きて、パジャマを脱いで体重計に乗る。そしてヤバイと思うことが、その一日の食生活に影響します。そしてその体重を記録する。食事量に気を付けて、体重が減ってきたら、それがモチベーションになって、さらにダイエットが進みます。BMIが25以上ある人は、ぜひ実行することをお勧めします。
食欲の秋ではありますが、BMI25以上の方々は要注意。美味しいものを食べていただくのは構わないのですが、食べ過ぎないこと、腹八分目を励行することが大切です。テレビの大食い番組に影響されないように。そして、食卓の残り物を、もったいないからとすべて食べたりしないように。「胃袋はごみ箱ではない」私の恩師のひとりの名言です。
11月は過ごしやすい季節ではありますが、まだまだコロナにご用心。ご自愛ください。
山王メディカルセンター院長 リウマチ・痛風・膠原病センター長
山中 寿
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