水と塩と熱中症
今年の梅雨は、何と6月27日に明けてしまいました。そして連日の猛暑です。熱中症対策で冷房もフル稼働となり、東京には電力需給ひっ迫注意報が発令されました。大規模な停電が起きないかとヒヤヒヤします。また梅雨に雨があまり降らなかったので水不足も心配です。幸いなことに東京の水源である利根川水系、荒川水系などのダムの貯水率は例年以上であり、東京では水不足の心配はないようですが、近畿、四国、九州では貯水率が低下したダムもあり、水不足が懸念されます。一方で、大気が不安定になるとゲリラ豪雨や線状降水帯などによる水害も発生しています。水不足と洪水。人類は自然にはかなわないとわかってはいるものの、何とかならないものかと思ってしまいます。
この制御不能な水。宇宙に漂うわが地球は、表面の70%が水で覆われた水惑星ですが、その97.5%は海水で、淡水はわずか2.5%。しかもその多くは北極や南極の氷や氷河で、我々が利用できる川や湖の水は全体の0.01%しかないとも言われます。
一方で、水はすべての生物の活動に欠かせません。実際に我々の体の60%は水分でできています。そして、体の中の水(体液)に含まれる0.9%の塩分のおかげで、全ての細胞は形を保ち、働くことができます。したがって体には塩分濃度を常に一定に保つ仕組みがあります。塩分の多いものを食べた後、むしょうに喉が渇きますよね。あれは水分を入れて塩分濃度を下げようとするためです。ただし、体内の水分量も増えますから、血圧が上がったり、手足がむくんだりします。逆に塩分を制限して水分を多く摂ると、塩分濃度が下がりすぎるので尿量が増えます。この状態では、飲んだ水分はほとんど尿に出ますから、血圧が上がりませんし、尿と一緒に老廃物が出ますので、体にとって好都合です。水分補給が勧められる理由です。
では、この時期に注意が必要な熱中症ではどうなるか?熱中症になると、体温を下げるためにたくさん汗をかきます。汗の中には塩分も含まれますので、体内の水分も塩分も減少し、血圧が低下して気分が悪くなったりします。したがって、熱中症で汗をいっぱいかいた時は、水分と共に塩分も摂ることが勧められています。経口補水液やスポーツ飲料の出番になるのですが、ご注意を。これは汗をいっぱいかいた時の話であって、汗もかいていないのに、熱中症の予防だといって経口補水液のような塩分のたくさん入った飲料をたくさん飲むのは間違いです。血圧が上がる原因になりますから高血圧のある人は要注意。またスポーツ飲料の中には糖分が多い飲料もあります。血糖上昇につながる場合もありますから、糖尿病のある人は要注意。状況を考えて飲むようにしてください。
梅雨明けと時を同じくしてコロナがジワリと増えてきました。PCRが陽性になると、発熱あれば10日間、無症状でも7日間の自宅待機が必要になりますが、ほとんど重症化はしないようですので、数は増えても以前ほどの怖さはありません。もちろん注意は必要ですが、屋外では熱中症対策のためにもマスクを外したほうが良いと思います。
猛暑はしばらく続きそうです。熱中症予防で冷房は必要だが、電力逼迫で節電も必要、コロナ対策も必要、となれば、我々は、遅くまで外出せず、自宅ではテレビを消し、早く電灯も消して、早寝早起きの健康的な生活がお勧め、という事になりそうです。
山王メディカルセンター院長 リウマチ・痛風・膠原病センター長
山中 寿
リウマチ・痛風・膠原病センターのご案内
山中医師の新・リウマチ歳時記アーカイブス
山中医師が2011年から8年間にわたって毎月書いてきたエッセイは下記のサイトで見ることができます。
リウマチ歳時記アーカイブス