新・リウマチ歳時記 Vol.34(2022.5.1)

2022年05月01日 新・リウマチ歳時記

行動制限なしのゴールデンウィークに向けて 

3年ぶりに行動制限のないゴールデンウィークが始まりました。ため込んだ思いが弾けるように、人々がレジャーを楽しんでいる様子がテレビで大きく取り上げられています。コロナウイルスはこの2.5年間で変異を繰り返し、少なくとも現時点では発生当時のように高率に肺炎を起こすウイルスではなくなりました。現在も感染は続いており、PCR陽性者のなかにも発熱や上気道炎症状がある人がいますが、多くは無症状で、重篤な基礎疾患がない限り、入院の必要もなくなりました。

私は、2021年1月以来、コロナの出口戦略は3つあると何度も書いてきました。①感染リンクの途絶、②ウイルスの変異による弱毒化、そして③ワクチンです。当初は、①感染リンクの途絶で頑張るしかなかったのですが、②ウイルスの変異による弱毒化が進み、③ワクチンも国民の80%が2回目接種、50%が3回目接種を受けるまでに普及しましたので、現時点では②③がそれなりに達成されていると言えます。したがって、①感染リンクの途絶に関して、少しは緩和できる状況になっています。

ただし、現時点でもまだ感染者は多いですし、感染したら無症状でも7日間は自宅安静せねばなりませんから、身体的リスクよりも職場や家庭における社会的リスクの方が大きい状況が続いています。罹らないに越したことはないので、①感染リンクの途絶に関しても引き続き注意は必要です。マスク着用は必要だと思いますし、大勢が集まってどんちゃん騒ぎなどできる状況では全くありません。節度を持って、少しずつ行動範囲を広げられたらと思います。

いろんな人がいろんなことを言うので、誰を信じていいのかわからないという声を聞きます。

テレビなどメディアでは、ゴールデンウィークの人並を報道する一方で、また新しい変異株が出たとか言って、危機感を煽ります。多くの人がコロナ感染症をインフルエンザ並みの5類にしろと言っていますが、厚生労働省は決断しません。また感染症の専門家も、まだまだ危ないとしかいいません。東京五輪の時には「安全安心」という言葉を連呼した都知事も、コロナが安全安心とは言わなくなりました。

それは、「安全を目指して作られた規制や枠組みは緩和できない」という、現代社会の大原則のためだと思います。例えば、いったん作った信号機や横断歩道は、交通量が減ってその意味がなくなっても撤去されない。なぜならば、もし撤去して事故が起こったらだれが責任を取るのか、という人が必ず出てくるからです。お薬の添付文書も、厚生労働省が承認しているので、どんなに状況が変わっても、いったん書かれた内容は変えられない。変えて問題が生じたら変えることを許可した人の責任になるからです。感染症の専門家も、現在のコロナウイルスが感染して重症になる確率は低いことがわかっていても、大丈夫だとか、安心してくださいと楽観的なことは決して言えない。悲観的で注意を喚起するような発言しか言えないのです。

したがって、「誰の意見を信じてよいのか迷ってしまう」のですが、結局は、「発言した人の立場を考えて理解する」ことが大切なのだと思います。何も考えずに聞くのではなく、ワイドショーの司会者は煽るのがお仕事、感染症の専門家はリスクを語るのがお仕事、などと考えて、その人の発言を聞けば、おのずと正解が見えてくると思います。このようなメディアリテラシーは、我々がこのコロナ禍で学んだひとつの教訓だと思いますので、コロナ禍が続くにしても、収束したとしても、今後の社会に活かすことが必要だと思った次第です。

あらたうと 青葉若葉の 日の光
― 芭蕉

誰もステイホームと言わなくなり、皆が思い思いに外へ出て、薫風のなかで日光を浴び、新緑を楽しむことができるゴールデンウィークになりますように。

追加です。4月30日に久しぶりにNHKに出演しましたが、再放送があります。ご参考まで。
5月6日(金) 午後00:00~00:45 NHK Eテレ 『チョイス@病気になったとき』「関節リウマチ 最新情報」

山王メディカルセンター院長 リウマチ・痛風・膠原病センター長
山中 寿

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山中医師が2011年から8年間にわたって毎月書いてきたエッセイは下記のサイトで見ることができます。
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