新・リウマチ歳時記 Vol.26(2021.9.1)

2021年09月01日 新・リウマチ歳時記

ワクチンを受けた人が増えてきました

今年の夏は何だか変です。7月16日に梅雨が明け、猛暑の日々が続きましたが、8月中旬になって再び梅雨前線が停滞し、各地で豪雨災害が出ました。「梅雨の戻り」であったようで、その後は再び猛暑が復活し、ここ数日間はうだるような暑さです。要するに、今年は梅雨明けが2回あり、夏が2回来てしまった感じです。

一般的に、ウイルス感染症は冬に流行します。ウイルス自体が低温・低湿度を好むことに加え、湿度が下がると飛沫に含まれる水分が減るため、飛沫が遠くまで飛散することも一因です。おなじみのインフルエンザも冬が本番で、夏には影を潜めます。今年の夏の暑さが、コロナウイルスの流行に歯止めをかけてほしいのですが、高温多湿の夏にも関わらず、一向に流行に衰えを見せません。今回のコロナ感染症は2019年12月に武漢で発生して以来、世界中で2億人を超える人が罹患しました。このまま、何もしないで収束することは、不可能と思われます。

現時点の切り札であるワクチンですが、日本でも接種が進んでおり、2回接種を終えた人が5,000万人を超えました。外来を受診される患者さんでも、ワクチンを受けた方が増えました。まだ受けておられない方も、接種する機会があれば、躊躇なく受けていただくようにお願いいたします。

そのワクチンですが、有効性の報告がたくさん出てきました。8月25日の厚生労働省の専門家会合の報告では、8月18~20日の人口10万人当たりの新規陽性者数は、未接種が88.8人、1回接種が25.2人、2回接種が5.4人 でした。つまり、罹患する確率は1回接種で28.3%まで、2回接種で6.1%まで低下したことになります。また複数の報告で、重症化が抑えられることが示されています。

ワクチンを2回接種しても感染する例があるようですが、1)家庭内のワクチン未接種者が感染して、家庭内で多量のウイルスが飛散した場合、2)ワクチン2回接種後すぐに会食などした場合、のようです。私がPCR検体を採取した例でも、そのような方がおられます。したがって、1)家族の皆さんが可能な限りワクチンを受けられるようにすること、2)2回目を接種後2週間たつまでは、油断は禁物であること、の2つが注意です。ワクチンを2回接種すれば、いちおうは安心できるのですが、それでも今まで通りの注意は必要だ、という事になります。

ワクチン接種に関しての情報です。先月号とほぼ同じ内容です。

  1. ワクチンは、主としてファイザー製とモデルナ製が使われています。副反応はモデルナのほうが多いようですが、有効性には大差がないようです。
  2. 発熱時には、アセトアミノフェン(カロナール、タイレノール)やロキソニン、イブプロフェンなどの非ステロイド抗炎症薬が有効です。市販薬もあります。38.5℃を超える場合に服用を勧めます。
  3. モデルナワクチン接種後1週間ほどして腕が腫れる場合があり、モデルナアームと呼ばれています。なぜか30代、40代の女性に多いようです。上記の解熱薬も効きます。
  4. リウマチなどで免疫を抑える薬剤を服用している場合の注意です。
  • 副腎皮質ステロイドや一般の抗リウマチ薬は、休薬の必要はありません。
  • メトトレキサート製剤(リウマトレックス、メトレートなど)、JAK阻害薬(ゼルヤンツ、オルミエントなど)は、ワクチン注射後の1週間は休薬し、次の週から通常に服用してください。
  • 他の免疫抑制薬(プログラフなど)や生物学的製剤(エンブレル、アクテムラなど)は、通常通りで良いのですが、念のためワクチンを打つ前日、当日、翌日の3日間は使わないほうが良いでしょう。

2011年8月に書き始め、毎月初に公開してきたこの記事ですが、皆さんからの励ましやご感想をいただきながら、今回で10年を超えました。毎月、プリントアウトしたものを外来待合においておりますが、山王メディカルセンターのホームページでも掲載しております。過去の文章も合わせて読めますので、ご覧いただけると幸いです。

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残暑が続きます。コロナの予防も大切ですが、ご自身の健康管理にも十分ご配慮ください。

山王メディカルセンター院長 リウマチ・痛風・膠原病センター長
山中 寿

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