新・リウマチ歳時記 Vol.25(2021.8.1)

2021年08月01日 新・リウマチ歳時記

コロナパンデミックの中の東京五輪

夏空と共に、東京五輪が始まってしまいました。コロナ感染が急速に増加している東京に、全世界からアスリートが集まって白熱した試合が行われています。テレビのニュースを見ていても、コロナ感染の深刻さを伝える暗いニュースが続いた次の瞬間、明るい音楽と共に東京五輪で活躍する日本選手の様子が伝えられますが、そのギャップの大きさについていけません。私は、そんなにメンタルが弱くないはずですが、もともとスポーツ大好き、お祭りも大好きだからでしょうか。選手を応援したい気持ちは強いのですが、五輪開催でコロナ罹患が急速に進んだのは疑いのない事実であり、医療関係者の一人として憂慮するだけでなく、恐怖すら覚えます。

以前から何度も書いてきましたが、コロナの出口戦略は3つ、①感染リンクの途絶、②ウイルスの変異による弱毒化、そして③ワクチンです。今は、①感染リンクの途絶を、皆がそれぞれの立場で徹底すること、③ワクチンを受けること、に頑張るしかありません。②に関しては、過去の感染症の歴史を見ても、パンデミックを起こしたウイルスは、いずれは弱毒化します。今回のコロナウイルスも変異を重ねるにつれて感染力は強まっても、どうやら毒性は弱まってきているように思われます。いずれはインフルエンザのような一般的な感染症になるでしょうが、それまでに長い時間がかかります。たぶん5年や10年はかかると思います。今、人類はmRNAワクチンと言う新しい技術の成果があります。ワクチンは、早期に日常生活の制限を緩め、経済活動を再開するために必要な手段なのです。いずれはワクチンパスポートが様々な場面で利用され、ワクチン接種歴がないことが不利に働く状況になると思います。ワクチン接種がまだの方は、可能な限り、積極的に受けるようにお願いします。
ワクチン接種に関して、いくつか情報をお知らせします。

  1. 現在、自治体ではファイザー製、職域ではモデルナ製が使われていますが、有効性、副反応に大きな差はありません。
  2. ワクチンを2回接種すると、感染の確率は10分の1以下に抑えられますが、家庭内に感染者がいて濃厚接触になった場合は、感染リスクが高まるようです。家族内の成人は全員ワクチンを受けるようにお考え下さい。
  3. ワクチンの副反応として発熱がありますが、若い世代に多く、高齢者には少ないようです。私もワクチンを2回受けた時、発熱したら「若いんだ」と言ってやろうと思っていましたが、発熱しませんでした【ちょっと残念でした】。
  4. 発熱時には、アセトアミノフェン(カロナール、タイレノール)やロキソニンなどの非ステロイド抗炎症薬が有効です。市販薬でも構いません。1回目のワクチン接種で発熱があった人は、2回目の接種の1,2時間前に服用しておくと良いと思います。
  5. モデルナワクチン接種後、稀に1週間ほどして腕が腫れる場合があり、モデルナアームと呼ばれています。たぶん数百人に一人程度頻度ですが、腫れて熱を持つので良く冷やしてください。また上記の解熱薬も効きます。
  6. 免疫を抑える薬剤を服用している場合の注意です。
  • 副腎皮質ステロイドや一般の抗リウマチ薬は、休薬の必要はありません。
  • メトトレキサート製剤(リウマトレックス、メトレートなど)、JAK阻害薬(ゼルヤンツ、オルミエントなど)は、ワクチン注射後の1週間は休薬し、次の週から通常に服用してください。
  • 他の免疫抑制薬(プログラフなど)や生物学的製剤(エンブレル、アクテムラなど)は、通常通りで良いのですが、念のためワクチンを打つ前日、当日、翌日の3日間は使わないほうが良いでしょう。

早くコロナ感染が収束し、このコラムに、以前のような平和で、心休まる記事が書きたい、強くそう思っています。酷暑です。熱中症にご注意のほど。

山王メディカルセンター院長 リウマチ・痛風・膠原病センター長
山中 寿

リウマチ・痛風・膠原病センターのご案内
山中医師の新・リウマチ歳時記アーカイブス