「お行儀よく」を見直す
今年は思いのほか梅雨が長引いています。確か一昨年は6月に梅雨明けしてしまったと記憶していますが、今年は8月にずれ込んでしまいました。予報では梅雨が明けた後は厳しい暑さが待っているとのこと、特に今年はマスクという厄介者をつけての暑さ対策を覚悟せねばなりません。
新型コロナに翻弄される毎日が続きます。現在の状態は第2波と言ってよいと思いますが、ワクチンも有効な治療薬もない現時点では、皆が自分を守ることに主眼を置くしかありません。では何に気を付ければよいか。とても良い言葉を思いつきました。「お行儀よくすること」です。
新型コロナは主として飛沫感染ですので、「飛沫を出さない」「飛沫をかぶらない」ことが大切です。
どんな場合に感染リスクが高まるかを具体的に考えると、ぺちゃくちゃ話しながら食事をする、電車内などで大声で笑い合う、大皿から直箸(じかばし)で食べ物を取る、グラスを回し飲みする、歩き食べして、道路に物を捨てる、道路につばや痰を吐く、汚い手で握手する、やたらにハグしたがる・・・これらは、感染予防の上からは避けたい行動ですが、いずれも「お行儀が悪い」行動である点が共通しています。つまり「お行儀よく」することは、コロナ対策になります。
歴史的に見れば、過去に何度も新しい種類の感染症が流行しています。流行の伝播速度は、交通や運輸が進んだ現代ほどではないものの、かなりの広がりを見せた感染症もありました。病原体も同定できず、診断もできず、治療法もない時代に、どうやって感染を予防していたのか。おそらく、とてもたくさんの犠牲者の経験から、感染を防ぐ社会的な行動様式や規範ができていたと思います。その一つが「お行儀よく」ではないでしょうか。「お行儀よく」することで、自分が感染するリスクを減らす、人に感染させるリスクも減らす、つまり、「お行儀よく」することは、人類の長い歴史の中で形成された感染症予防法だったのではないかと思います。
テレビなどの報道では、奇をてらうような意見が強調されて、人々に恐怖を与える傾向があります。テレビ依存度の高い人ほど、今回のコロナに恐れおののいていると思います。もちろん心配は必要ですが、我々の先人が築き上げてきた素晴らしい感染予防対策である「お行儀よく」をもう一度見直して、感染リスクを下げる行動をしていきたいと思います。
「マスクしてマスクをつけた君に会う 君もウイルス我もウイルス」南準一郎(Wedge8月号より)
マスクをつけることがお行儀良いかどうか、??ではありますが・・・
暑い夏になりそうです。皆様も健康管理に十分ご留意ください。
山王メディカルセンター院長 リウマチ・痛風・膠原病センター長
山中 寿