「センター便り」と題する記事を書き始めたのは私が東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センターに在職しておりました2011年8月。東北大震災後の暑い夏でした。最初は単なるお知らせの記事でしたが、患者さんに知っていただきたい医学知識や東京女子医科大学の医療事情なども書いてみよう、さらには読者に少しは楽しんでいただける記事を書こう、四季の移ろいに関しての私の思いも書いてみようと、少しずつ欲が出て、結局、私が東京女子医科大学を退職するまでの8年近く、毎月1日にホームページに掲載してきました。そして、毎月の記事を集めたエッセイ集「リウマチ歳時記」を2019年1月に幻冬舎から出版いたしました。
しかしながら「センター便り」は、2019年4月、私の東京女子医科大学退職をもって最終回を迎えました。37年間在籍した東京女子医科大学には多くの思いがありますが、「センター便り」を書き続けたこの8年間は私にとって、とても充実感のあふれる日々であったと、いまさらながら思います。励ましていただいた多くの方々に心より感謝いたします。
私は、2019年4月末をもって東京女子医科大学を退職し、その後は縁あって5月20日から医療法人財団順和会 山王メディカルセンターに勤務しております。異動してしばらくは、当然のことながら何かと落ち着かず、以前のような文章を書く気が起きませんでしたが、3か月が過ぎ、ようやく新しい環境にも慣れることができて、また記事を書き始めようと思うに至りました。
以前は「センター便り」と題しておりましたが、前述のように「リウマチ歳時記」を出版したこともあり、今後は「新・リウマチ歳時記」と題して書き続けていきたいと思います。
AIに代表されるような科学技術の急速な進歩により、社会構造は急速に変化しています。私も含め、すべての人々は、望む望まないにかかわらず、抗しがたい変化の渦に飲み込まれています。しかしながら、春夏秋冬は、毎年変わらず訪れ、私たちの心を癒してくれます。春は桜を愛で、夏は猛暑を何とかしのぎ、秋は紅葉に目を癒し、冬は雪景色を楽しむ、そのかわり、台風や地震、火山の噴火など、時々不機嫌になって暴発する地球と、うまく付き合っていかなければならない。つまり、私たちは、目まぐるしく変化する社会にばかり目を奪われていてはいけないのです。自然に対する畏敬を忘れず、自然の前ではごく小さな存在である私たちの短い人生を、精いっぱい楽しみたいと思います。
9月1日から掲載していきますので、どうぞお付き合いください。
2019年8月16日
山中 寿
医療法人財団順和会 山王メディカルセンター 副院長、リウマチ・痛風・膠原病センター長
国際医療福祉大学医学部教授
東京女子医科大学 客員教授