本当に長かった夏も終わり、日本列島にもようやく秋が訪れました。長い夏のために秋が短くなることは残念なことではありますが、食欲の秋、スポーツの秋、芸術の秋、一年で最も素晴らしい季節を十分に満喫していただきたく存じます。
報道等でご存知の方も多いと思いますが、私は東京女子医科大学の理事長・学長に選任され、去る10月23日に就任いたしました。それに伴い、山王メディカルセンターを10月31日に退職いたしました。今回のことは、私にとっては全く青天霹靂の出来事で、とても戸惑いましたが、内外から強い要請があったことと、私が37年間在籍した東京女子医科大学が危急存亡の秋と聞き、就任の要請をお受けしました。
理事長・学長職は、大きな重責を伴いますし、私の役回りは火中の栗を拾って回るようなことですので、とても診療の片手間にできるような業務ではありません。ずいぶん悩んだのですが、山王メディカルセンター退職と同時に、44年間続けた「お医者さん」を卒業することを決意いたしました。したがって、山王メディカルセンターでも東京女子医科大学でも外来診療は担当せず、理事長・学長職に専念いたします。山王メディカルセンターの11月1日以降の外来担当は、山王メディカルセンターの後任院長である針谷正祥先生をはじめとする医師にお任せいたします。いずれも私が信頼を寄せている優秀な医師ですので、ご安心ください。
私は1980年に医師になって以来、三重大学、東京女子医科大学で臨床、研究、教育の3つを同時に行ってきましたが、2019年に山王メディカルセンターに着任してからは、ほとんど臨床一本で、多くの患者の皆様の診療に当たってきました。「優秀な医師」ではなく、「良いお医者さん」であろうと努めてきたつもりです。この新・リウマチ歳時記の先月号(2024年10月号)で書いたように、受診していただいた患者さんを「私はあなたの主治医」と考えて接し、患者さんからは「私の主治医」と思っていただけるように努めたいと思っていたのですが、それもかなわなくなりました。私を信頼して受診していただいた患者の皆様には、誠に申し訳ない気持ちでいっぱいで、今は胸がつぶれるような思いです。心よりお詫びいたします。
新・リウマチ歳時記も今回が最終回です。もともとは、東京女子医科大学在籍中の2011年に「センター便り」として書き始めたエッセイですが、2019年8月からは山王メディカルセンターホームページ上に「新・リウマチ歳時記」として書き繋ぎ、計13年あまり毎月、書いてきました。幸いなことに多くの患者さんたちにも楽しんでいただけたようで、私の大きな思い出のひとつになります。長らく愛読していただいた方々には心より御礼申し上げます。東京女子医科大学理事長・学長職に着任して10日余りですが、現時点では混乱の渦の中にいて、自分の立ち位置もわからない状況です。もう少し余裕ができれば、またエッセイを書く気になるかもしれません。その時にはぜひよろしくお願いいたします。
長い年月の間に、患者の皆様からいっぱい教えを受けたことを、心から感謝しております。なにとぞ事情をご理解いただき、ご寛容の上、今後の治療をお続けいただくよう、そして1日も早い快癒を目指していただくよう、心よりお願い申し上げます。
皆様のご多幸をお祈りしながら、お別れです。ありがとうございました。
2024年10月31日
山中 寿