新・リウマチ歳時記 Vol.47(2023.6.1)

2023年06月01日 新・リウマチ歳時記

変えられないものと変えられるもの

気候の変化が激しい日々が続いています。まだ5月なのに夏のように暑い日があったと思うと、直後には3月並みの気温に下がったり、まだ5月なのに台風が日本列島に近づいたり、まだ5月なのに西日本が梅雨入りしたり。毎朝、天気予報を見て服装を考えねばならないし、寒暖差のために体調管理も気になるし、いろいろ大変です。四季の中で過ごしやすい季節は、もちろん春と秋ですが、最近の気候をみていると、春と秋が極端に短くなってしまって、春夏秋冬の四季が、夏冬の二季になっているような気さえします。しかし、大自然の気まぐれは誰にも何ともできない。3年半前に突発的に生じたコロナパンデミックは人知を結集させて何とか収束に向かっていますが、気候の問題は誰にも変えようがなく、誰に不満を言っても解決しません。地球上のすべての生物が、うまく適応していくしかない問題です。

誰にも変えようがない問題として、「遺伝」があります。我々は、父親の精子と母親の卵子が持っていたDNAが受精卵で結合し、父と母から半分ずつDNAを引き継いで生まれます。DNAは設計図のようなもので、約23,000個の遺伝子が含まれています。そして各々の遺伝子から父と母の性質を受け継いだたんぱく質が生まれ、すべての生体の活動に使われています。DNAはとても頑丈な物質で、一生変化しません。したがって、父と母から受け継いだ我々の体は、いい意味でも悪い意味でも、一生涯にわたって父と母の影響を受け続けることになり、一生涯、その呪縛からは逃げられない。お釈迦様の掌のような遺伝子の掌の上で、転がされているようなものです。でもご両親の責任ではありません。ご両親も先祖から、そのDNAを受け継いできただけなのです。

以前に書きましたが、お酒に強い体質、弱い体質も両親から受け継いだ遺伝子で決まります。両親からアルコールの分解が弱い遺伝子を受け継ぐと、お酒の飲めない体質になり、これは一生変わりません。同じように、高血圧や糖尿病、痛風などの生活習慣病も、両親から受け継いだ遺伝子で、病気になりやすいかどうかはかなり決まってしまいます。例えば、ABCG2というたんぱく質の作用が弱い遺伝子を持った人は、一般の人より9倍も痛風を発症しやすいことがわかっています。これも両親から引き継いだ遺伝子で決まります。

ではどうすればよいか?高血圧や糖尿病、痛風などの生活習慣病は両親から受け継いだ遺伝要因と、我々自身の日常生活を反映する環境要因が相加的に合わさって発症します。遺伝要因を人為的に変えることは不可能ですが、環境要因は変えることができますから、遺伝要因が強くても、環境要因の負荷を減らすことで発症を防ぐことは可能です。病気と関連する環境要因は、病気ごとに異なっていて、例えば高血圧では、肥満、運動不足、塩分過剰摂取などがあげられますし、痛風では、肥満、アルコール摂取過剰、プリン体の取りすぎなどが該当します。両親から生活習慣病になりやすい遺伝子を受け継いでいる可能性がある人は、自分の日常生活に注意し、健康に対する意識を高くもつことで病気の発症を防ぐことができるでしょう。

両親から受け継いだDNAや遺伝子は変えられないが、自分の生活習慣を変えることで、病気の発症を防ぐことができる。これは、今年の気候のような天候不順は誰にも変えられないけれど、各個人が衣服をはじめとして生活の仕方を変えることで対応できることと同じことかな、と思いました。地球規模の出来事と、個人の体の出来事では、サイズ感は全然違いますが、どちらも同じ自然の摂理なのかと思いました。ご参考になれば幸甚です。

リウマチ・痛風・膠原病センターのご案内
山中医師の新・リウマチ歳時記アーカイブス

山中医師が東京女子医科大学にて2011.8~2019.4に連載した「センター便り」はこちら