リウマチ歳時記 Vol.11(2020.6.1)

2020年06月01日 その他

今回のコロナも一段落のようで、やっと緊急事態宣言も解除されました。もちろんまだまだ油断は禁物で、以前通りの生活には程遠いですが、少しずつ日常が戻ってきます。

新型コロナの最近の話題を少し。

不思議なことなのですが、日本では欧米各国に比して新型コロナウイルスの感染者数が少なく、罹っても軽症のことが多いことが分かっています。その結果として死亡率も低く、10万人当たりの死者数は、欧米諸国の100分の1程度です。しかし、なぜ感染者が少ないのか、重症者が少ないのか、さっぱりわかりません。いろんな仮説があります。靴を脱ぐ清潔な生活様式だとか、ハグやキスをしない挨拶の習慣だとか、マスクの習慣だとか、あるいは結核に対してBCG接種をしているからだ、などなど。

ところが、新型コロナによる死亡率が低いのは日本だけではありません。死亡率は、韓国や台湾、シンガポールやオーストラリア、そして中国も同様に低く、どうやら日本をはじめ東アジア、東南アジアの国々の人間は、新型コロナウイルスに対して、それなりの抵抗力を持っているようなのです。

興味深い研究が報告されています。まず、新型コロナウイルスに罹患した患者さんの血液中の抗体を詳しく調べると、日本人の場合は、あたかも過去に同じウイルスに感染したことがあるような抗体が出てくるというのです。また別の報告では、新型コロナに感染したことのない人の40~60%は、新型コロナウイルスと反応するリンパ球を持っているとのことです。これらの研究から考えると、過去に今回の新型コロナウイルスによく似たウイルスが、日本をはじめ、東アジア、東南アジアで流行したことがあり、これらの国々の人の体の中には、コロナウイルスにある程度は反応する抗体やリンパ球が既にあるのではないか、という仮説が成立します。もしそうだとすると、これらの抗体やリンパ球が、新型コロナウイルスに少し反応して、感染を防ぐとか、感染しても軽症で終わらせているのではないか、と思われます。つまり、日本や東アジアの国々では、新型コロナウイルスに対する集団免疫が既にすでにある程度は成立しているのかもしれません。もちろん日本人でも中国人でも重症例、死亡例はありますが、この未知のウイルスに罹患しなかったために重症化したと考えれば説明が付きます。

あくまで仮説の段階で、今後の検証が必要ですが、もともとコロナウイルスは普通の風邪を起こすウイルスですので、過去に流行していた可能性は十分にありますし、免疫の働きを知る医学研究者にとっては、目からうろこが落ちるような、とても納得できる仮説です。少し難しい話ですが、話のネタになりそうな情報でしたので、紹介しました。

今後、世界はコロナ前の世界(Before Corona, BC)からコロナ後の世界(After Corona、AC)へ大きく変化します。経済構造も変わりますが、人と人の付き合い方も大きく変化するでしょう。その時に、「レジリエンス(復元力)」という言葉が重要になると思います。不利な環境を、しなやかな強さで克服し、元の姿に戻る力。そうした力を、私たち一人一人が発揮していく時間が始まります。

今月半ばには梅雨を迎えます。皆様におかれましても、健康に十分留意して、お過ごしください。

山王メディカルセンター院長 リウマチ・痛風・膠原病センター長
山中 寿

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