リウマチ歳時記 Vol.7(2020.2.1)

2020年02月01日 その他

今年は新年早々から気候が変です。1月というのに春のような陽気の日があったり、すごく寒くなったり、冬なのに雪ではなくて豪雨が降ったり、わが地球が機嫌を損ねているのではないかと本気で思ってしまいます。地球のご機嫌を損ねたのは、環境破壊を続けている我々人間であることは明らか。本当になんとかしないといけないと思います。

その中で、中国の武漢に端を発した新型コロナウイルスが全世界に広がっています。交通手段が限られていた時代は、ウイルスが急に広がることもなかったのですが、現在のように何百人もが一度に飛行機で移動する時代では、ウイルスもあっという間に世界中に広まってしまいます。今、世間はその話題で持ちきりですが、ウイルスのことを知らない人が意外に多いようなので、少し解説してみます。

ウイルスは電子顕微鏡で見ないと見えないほど小さな微生物で、5万以上の種類があります。構造などの特徴から73に分類したものの一つがコロナウイルスです。さらにコロナウイルスの中にも多くの種類があり、今回の新型コロナウイルスは、その一つです。

ウイルスと細菌とは全く違います。細菌は単細胞生物の一種で、自分で増殖しますが、ウイルスは生物と非生物の間のような存在で、細胞構造を持たず、自分の力では増殖できません。特定の動物の細胞に寄生して初めて増殖します。また、細菌には抗生物質が効きますが、ウイルスには抗生物質は効きません。インフルエンザウイルスや帯状疱疹のウイルスには特別な抗ウイルス剤が開発されていますが、ほとんどのウイルスには治療薬がありません。ウイルスから体を守るものはリンパ球と、リンパ球が作り出す抗体というたんぱく質です。ウイルスが体に入ってくると、体の免疫システムが作動して、ウイルスを攻撃して排除する抗体を作ります。例えば、はしかにかかると二度とかからないのは、はしかを起こす麻疹ウイルスに対して抗体ができるためです。ワクチンは体に作用して抗体を作らせる働きがあるので、ウイルス感染に対する予防効果があります。インフルエンザの予防接種はこのようなワクチンの一つですが、一種類のワクチンはひとつのウイルスに対する予防効果しかないので、インフルエンザの予防接種をしても、他のウイルスを予防することはできません。今度の新型コロナウイルスに対しては、まだワクチンが開発されていないので、ワクチンによる予防はできません。これからワクチン開発を始めても、実用化には何年もかかりますので、現状では感染を防ぐしか手段がないのが現状です。ただし、コロナウイルスは表面が脂質で覆われているので、アルコールや石鹸に弱く、アルコールや石鹸で手洗いすることは有効と考えられています。これは良いニュースですね。

今回の新型コロナウイルスをめぐる政府やWHOの行動を見ていると、病気の予防が大事なのか、経済損失を防ぐことが大事なのかを天秤にかけているように見えます。それは、便利な生活が良いのか、地球環境の保全が大切なのか、を天秤にかけている現在の世相をまさに反映しているように思います。どちらのほうがが大切なのかは自明の理なのですが、近視眼的な見方から抜け出せない現代社会の限界を感じます。

現時点では、インフルエンザにも注意。新型コロナウイルスは現時点では「近づきつつある危機」ですが、インフルエンザは「今そこにある危機」。どちらも手洗いが大切なことは同じ、十分に注意をお願いします。

山王メディカルセンター副院長 リウマチ・痛風・膠原病センター長
山中 寿

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