新・リウマチ歳時記 Vol.42(2023.1.4)

2023年01月04日 新・リウマチ歳時記

骨粗鬆症の話

今年は、快晴無風で陽光眩しい正月3が日でした。このお天気のようにような穏やかな毎日が、地球上のすべての場所に訪れることを願わずにいられません。今年も初詣では、毎年のように「世界平和」をお願いしてまいりました。

今回は、関心が高いテーマである骨粗鬆症について解説します。
骨はカルシウムやコラーゲンでできた硬い組織で、鉄骨が高層ビルを支えているように、体を支える重要な組織です。しかし、単に支柱としての働きだけでなく、骨の中にある骨髄は赤血球や白血球のような血球を作る造血工場ですし、骨はすべての細胞に必要なカルシウムの貯蔵庫でもあります。

意外に知られていないことなのですが、骨は生きています。建築されたらずっと変わらない鉄骨と違って、骨は常に作り変えられています。骨の表面には、破骨細胞と骨芽細胞をいう2種類の細胞がくっついていて、破骨細胞が骨を削り取り、骨芽細胞が新しい骨を作っています。つまり、都市の構造を保たつために、解体業者と建築業者が働いて、スクラップ&ビルドを繰り返しているようなものです。これは若い時だけでなく、高齢になっても新しい骨に約3年で作り替えられています。さらに、ビルの鉄骨の再利用は容易ではありませんが、破骨細胞は骨を食べ、骨基質を消化分解して、カルシウムを再利用します。素晴らしいリサイクルシステムです。現代社会で必要性が叫ばれている循環経済が、体内ではしっかり確立しています。
破骨細胞と骨芽細胞の働きは、普通はうまく調和がとれているのですが、何らかの原因で、破骨細胞が骨芽細胞よりも活発になると、骨が脆(もろ)くなる、これが骨粗鬆症です。女性ホルモンであるエストロゲンには破骨細胞の働きを抑える作用がありますが、閉経してエストロゲンが減ると破骨細胞が勢いを増し、骨芽細胞の作用を上回ってしまいます。閉経後の女性が骨粗鬆症になりやすいのはこのためです。そのほか、新しい骨を作る原料であるカルシウムやビタミンDが不足すると骨粗鬆になりやすい、またリウマチなどの治療に使われるステロイド剤は破骨細胞を活性化し、骨芽細胞を抑制するために、骨粗鬆症につながります。

骨粗鬆症になると何が困るか。いちばんは骨折しやすくなることです。骨粗鬆症があると尻もちをついただけで腰椎が圧迫骨折を起こしたり、滑って転んで大腿骨頸部骨折を起こして、何か月も入院せねばならないことにもなります。では、骨粗鬆症を予防するためには、どうすればよいか。まずは牛乳を飲む、小魚を食べるなどによりカルシウムを十分に補充すること。次は日光に当たること。ビタミンDは紫外線を受けて活性化し、カルシウムを骨に運びます。そして、時々でいいので骨密度を測定することがお勧めです。簡易的に踵や手で骨密度を測定する場合もありますが、正確なのはDEXA法というX線を使った検査で、腰椎や大腿骨の骨密度を判定します。リウマチの患者さんは皆さん骨密度が低めですが、ステロイド剤を服用している人はさらに骨密度が低下する傾向があります。骨密度が低下している場合は、内服薬や注射薬を使う場合があります。何種類もありますが、なかでもプラリアという薬剤は、骨粗鬆症に効くだけでなく、関節リウマチの骨破壊を抑える効果があり、関節リウマチで骨粗鬆がある人にはよく使われます。6か月ごとに皮下注射する薬剤ですので、関心がある方はご相談ください。

コロナ感染症の勢いは収まりませんが、以前ほどの重症例は激減しており、社会活動も正常化してきました。コロナ禍からの完全な脱却にはまだ時間がかかりそうですが、明けない夜はない、止まない雨はない。皆様におかれましては、感染対策と健康管理に十分留意していただき、元気で健康な一年を過ごされますようにお願いいたします。

山王メディカルセンター院長 リウマチ・痛風・膠原病センター長
山中 寿

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