新・リウマチ歳時記 Vol.19(2021.2.1)

2021年02月01日 新・リウマチ歳時記

コロナとワクチンと豆まきと

今年の節分は例年より1日早い2月2日。地球が太陽を回るのに要する時間が365日5時間49分であるために、4年に1回うるう年があったり、暦がずれたりするそうです。それはともかく、節分と言えば「豆まき」。鬼は外、福は内と言いながら豆をまく、日本では古来からの風習ですが、元々、鬼とされたものは天然痘などの疫病。すなわち、豆まきは、春を前にして病魔に退散を願う行事です。今年はコロナ退散を願って、盛大に豆まきをしたいものです。

緊急事態宣言が出て1か月近くが経過しましたが、コロナ禍は一向に収束しません。少しは減ったものの依然として新規感染者も重症者も多く、医療機関は疲弊しています。現時点で想定できるコロナ禍の出口戦略は、①感染リンクを断つこと、②ウイルスが変異して弱毒化すること、③ワクチンによる集団免疫、であると先月のこの記事で書きました。今、皆が一生懸命に感染対策をしているのは、①を達成するためですが、なかなかうまくいかないことは、我が国のみならず世界各国の状況を見てもよくわかります。このままでは、コロナ禍が収束するまでに4,5年かかるのではないかと思います。その間に相当数の人が犠牲になり、多くの企業が打撃を被ることは確実です。したがって、現時点では、③ワクチン接種による集団免疫の獲得に期待をかける必要があると思います。

幸いなことに科学技術の進歩のおかげで、本来であれば開発に10年もかかるワクチンが1年も足らずで実用化されました。これは歴史に残る快挙です。さらに、今回のワクチンは従来のような不活化ウイルスを用いることなく作られたmRNAワクチンと言う画期的なワクチンです。世界に先駆けてワクチン接種を進めているイスラエルでは、ワクチンを2回受けた人がコロナウイルスに感染する頻度が著しく低かったとの速報も出されていて、かなり期待が持てます。日本でも、右往左往しながらではあるものの、ワクチン接種の準備が進んでおり、早ければ今月末から接種を受ける人が出てくるようです。
ワクチンを受けるべきかどうか。私は順番が来れば必ず受けます。現状を考えれば、ワクチンを受けることは自分のためだけでなく、家族のためでもあり、職場の人々のためでもあり、受診される患者さんのためでもあり、国民全体が集団免疫を形成するためでもあります。そういう前向きな気持ちで受けます。皆さんも前向きに考えてください。
ワクチンと言うだけで拒否反応を示す人々がいるようですが、誤ったデータ解釈でワクチンは怖いと無責任に煽った複数のメディアが、多くの医師から厳しい批判を受けて、記事を取り消しました。現代は、情報が多い分だけ、判断に迷う人が多いのは残念ですが、大切なことは何か、しっかり考えて前に進むべきであろうと考えています。ワクチン接種が、コロナ禍を押しつぶすほどに広がることを願っています。

では、関節リウマチなどで免疫抑制薬を使用中の患者さんは、ワクチンを受けてよいのかどうか。受けるべきと思います。ただし、免疫抑制薬の服用や生物学的製剤の注射と同じ日にワクチン接種を受けると、ワクチンの効果が弱くなる可能性がありますので、同じ日の接種は避けたほうが良いでしょう。ワクチンの接種日が決まったら、内服や注射の日程をずらしていただくようにお願いします。その他の免疫に作用しない一般の薬剤は、普通通りに服用しながら、ワクチンを受けてください。ご心配があれば、事前に主治医に確認していただくのが良いでしょう。

豆まいて コロナの恨みを 晴らします  by 寿

節分の豆で退散してくれるほどコロナウイルスは甘くないと思いますが、今年ばかりは私も「鬼は外」と、願をかけて豆を撒きたいと思います。

山王メディカルセンター院長 リウマチ・痛風・膠原病センター長
山中 寿

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