新・リウマチ歳時記 Vol.4(2019.11.1)

2019年11月01日 新・リウマチ歳時記


先月まで半袖姿がほとんどだったのが、早くもコート姿が目立つ季節になりました。冬が近づいてきた気配です。四季を陸上競技の400mリレーに例えると、最近は夏が走る距離が長くなり、秋が走る距離が短くなってしまった気がします。そんな短い秋ですが、過ごしやすい季節ですので、できるだけ満喫したいと思います。

今年は大きな台風が立て続けに日本列島を襲い、河川の氾濫などで大きな災害が出ました。被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。地球温暖化の影響で日本近海の海水温が上昇しているために、台風が急速に発達するのだそうです。つまり、これから地球温暖化が進めば、ますます強い台風に襲われる可能性があります。環境破壊をし続けている人類に対する地球の反撃のひとつでしょうか。人知を超えた自然の猛威ではありますが、災害から身を守るだけでなく、災害を防止するために、私たちひとりひとりに何ができるのか、よく考えてみないといけないと思います。

一般に、問題に遭遇した時などに、女性は共感を求め、男性は問題解決を求める、と言われます。もちろんすべてが当てはまるわけではありませんが、なるほどと納得することは多々あります。最近では、LINEなどのSNSで「いいね!」を求めるのは、まさに共感を求める行動でしょう。社会全体として、「共感力」の重要性が大きくなってきいているように思います。

「共感力」と「問題解決力」。このふたつの力を、医療の立場で考えてみましょう。医師の仕事の目的は、医学知識を駆使して病気を正しく診断し、正しく治療することです。つまり、医師の仕事の本質は「問題解決力」です。しかし、病気を患った人は、病気に派生するさまざまな問題を抱えています。病気が重症であるほど、また病歴が長いほど、患者さんはいろいろな悩みを持たれています。そのような患者さんは、そのような悩みを持っていることに共感してほしいと考えます。私が扱うリウマチ、痛風、膠原病は慢性疾患で、この傾向が強いうえに、特にリウマチ、膠原病は女性が多く、問題解決が大事だけれど、自分の状況に共感してほしいと思われる方が多いように思います。つまり、私たち医師には「問題解決力」だけでなく、「共感する力」も求められます。たぶん「共感力」が高い医師ほど、優しくていいお医者さんと呼ばれるのでしょう。

今後、AIが進歩してくると、医学的問題の多くはAIが答えを出してくれるようになります。そうなると、医師の仕事のうち「問題解決力」の多くはAIが担ってくれる時代を迎え、では医師は何をするのかが問題になります。患者さんの悩みやつらさに共感することが医師の中心的な仕事になるとは思いませんが、現在よりも「共感力」が要求される状況になると思います。この「共感力」、学ばなければならない医学知識が山ほどある医学教育の中ではまだまだ重視されていませんが、まずは患者さんの悩みに耳を傾けることが、「共感力」の第一歩だと思います。

私自身は、共感する前に問題解決方法を考えてしまうという、典型的な男性型思考の持ち主のようで、いつも妻に叱られていますが、大いに反省し、ますます重要になる「共感力」を高めていきたいと思っているところです。

11月になると、朝夕は気温が下がり、体調管理が大切な時期を迎えます。インフルエンザワクチンも11月中に受けることをお勧めします。

山王メディカルセンター副院長 リウマチ・痛風・膠原病センター長
山中 寿

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