新・リウマチ歳時記 Vol.20(2021.3.1)

2021年03月01日 新・リウマチ歳時記

ワクチン接種と服用中のお薬について

外出時には、まだコートが欠かせませんが、顔に吹きつける風がどことなく快く感じるようになってきました。少しずつですが、着実に春が近づいています。今年は年が明けてから暖かい日が多かったため、桜の開花も早いだろうと報道されていました。桜の開花が待ち遠しいのは例年と同じですが、今年ばかりは、新型コロナの収束のほうが待ち遠しいです。

日本でも医療関係者を対象にワクチン接種が始まりました。新型コロナウイルスが確認されてから1年もたたずにワクチンが使えるようになるなんて、我々医療関係者から見れば全く夢のような話で、科学技術の進歩には目を見張ります。是非ともこの進歩の恩恵を、皆で享受したいものです。今まで何度も書きましたが、パンデミックにおけるワクチン接種は、自分の感染予防だけでなく、家族や周囲の人のためでもあり、国民全体の集団免疫を形成するためでもあります。可能な限り多くの人にワクチンを受けていただきたいと思います。現時点ではワクチンは輸入に頼るしかなく、また世界中でワクチン争奪戦が起こっていますので、十分な量のワクチンがいつ供給されるかは不透明です。たぶん順番が回ってくるまでに時間がかかると思いますが、受けられるようになれば、是非受けていただきたいと思います。

病気で治療しておられる方は、ワクチン接種を受けて良いのか不安に思われると思いますが、原則的に誰でもワクチンは打てます。リウマチなどの自己免疫疾患をお持ちの患者さんも打てます。打てないのは、過去に予防接種で明らかなアナフィラキシーを起こして重篤な状態になった方だけです。予防接種で熱が出たとか、腕が腫れた人も受けられます。花粉症も、蕁麻疹も卵アレルギーも問題ありません。降圧剤やコレステロールを下げる薬を服用中でも問題ありません。

ただし、免疫を抑える薬剤を服用している場合は、少し注意が必要です。免疫の働きを抑えていると、ワクチンを打っても体内に十分量の抗体ができない可能性があり、結果としてワクチンの効果が弱まる可能性があります。米国リウマチ学会からも、薬の使い方についての推奨が出されていますので、それを基本に解説します。

  • 副腎皮質ステロイドや、一般の抗リウマチ薬は、通常通り服用しながらワクチンを服用してください。休薬の必要はありません。
  • メトトレキサート製剤(リウマトレックス、メトレートなど)は、ワクチン注射後の1週間は休薬し、次の週から通常に服用してください。
  • JAK阻害薬(ゼルヤンツ、オルミエントなど)は、ワクチン注射後1週間は休薬し、次の週から通常に服用してください。
  • 生物学的製剤(エンブレル、アクテムラなど)や他の免疫抑制薬(プログラフなど)は、通常通りで良いとされてはいますが、念のためワクチンを打つ前日、当日、翌日の3日間は使わないほうが良いでしょう。

いずれも、せっかく打ったワクチンの効果を下げないための注意であり、ワクチンが危険だからではありません。誤解されませんように。可能であれば、ご自身の服用中の薬剤について主治医の先生に確認していただくのが良いと思います。

「世の中にたえてコロナのなかりせば 春の心はのどけからまし」

果たして、のどかな春が訪れますかどうか。今年は無理だと思いますが、来年の春にはマスクなしで満開の桜を楽しみたいものです。この意味でも、多くの人々がワクチンの接種を受けられることを期待しています。

山王メディカルセンター院長 リウマチ・痛風・膠原病センター長
山中 寿

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