新・リウマチ歳時記 Vol.6(2020.1.4)

2020年01月04日 新・リウマチ歳時記

あけましておめでとうございます。本年の皆様のご多幸を心よりお祈りいたします。

令和になって初めてのお正月、東京はずっと快晴無風の素晴らしい天候に恵まれました。冬らしい寒さではありましたが、新春のうららかな陽光が降り注ぎ、心の中が温まるような穏やかな気分に浸りました。家族そろって近くのお寺に初詣に行った時も、すれ違う人々の顔には笑みが浮かび、歩く速度もいつもよりゆっくり。お正月には時間の歩みがゆっくりになるような気がしました。初詣では、今年1年、大きな災害や事故、事件がなく、幸せな時間が流れてくれることを祈りました。皆様のお正月はどうだったでしょうか?

先月初めに、国際学習到達度調査という国際調査で、日本の高校生の読解力が低下していることが分かったと報道されました。日本人の読書量が減っていることが原因だとか、メールやSNSなどで短い言葉しか書かないから、皆が長い文章を書けなくなってきたなどと解説していました。つまり短い文章がダメで、長い文章がいいと言っているかのようでしたが、本当にそうでしょうか?

実は、私も、最近、若い人々に文章を依頼する時には100〜200字程度で書いてもらうようにしています。皆さんすぐに書いてくれますし、その文章が面白い。エッセンスがぎゅっと詰まった文章は、だらだらと長く書くよりはるかに優れています。

考えてみれば、日本には、短歌や俳句といった短い文で心情を語る文化があります。短歌や俳句は季語や枕詞を使うことによって言葉に膨らみを持たせ、さらに短さゆえの曖昧さが、言外に余韻を醸し出すという特性があります。インパクトのある短い言葉を多用した小泉純一郎元首相や、キャッチコピーの名人糸井重里氏、ONE TEAMのように流行語大賞に選ばれるインパクトのある言葉も、この日本の短文文化の延長線上にあるように思います。だから、短い文章しか書けないことが悪いのではなく、長い文章でしか表現できない人々のほうが悪いのではないかとまで思ってしまいます。

私が毎月書いているこのエッセイは、いつも1200字程度、原稿用紙3枚程度です。もともとは医学の話題ですので、あまり短いとメッセージが伝わらない、でもあまり長いと読んでもらえない、試行錯誤の中で落ち着いた文字数です。SNSの短い文章に慣れた人々にはちょっと長いかもしれませんが、だらだらとは書いていませんので、最後までおつきあいをお願いいたします。

ところで、この国際学習到達度調査とやら、多くの国々が参加しているようですが、言語の違う国々の読解力をどのように比較しているのでしょうか。同じ内容でも、日本語で書かれたものを日本人が読解するのと、フランス語で書かれたものをフランス人が読解するのと、まったく違うと思います。その能力を国際比較することが可能なのでしょうか。興味があったので、この調査を行ったPISAというプログラムのホームページを調べてみたところ、国別のランキングのシステムではなく、各国の学校システムの評価が目的であるようです。何でもランキングにしたがるマスコミの姿勢は問題ですね。

令和2年、今年が皆様にとって実り多い1年になりますことを心よりお祈り申し上げます。

山王メディカルセンター副院長 リウマチ・痛風・膠原病センター長
山中 寿

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