診療内容

人工授精・体外受精胚移植(IVF-ET)・内視鏡手術・卵管鏡下卵管形成術(FT)などを行っています。

内視鏡手術

不妊治療の中核をなすのは、体外受精胚移植(IVF-ET)を中心としたいわゆる生殖補助医療(assisted reproductive technology:ART)になりますが、不妊治療の検査・治療中には、子宮筋腫や卵巣嚢腫(腫瘍の一種)などが見つかることがあります。さらに、最近増加している子宮内膜症も、骨盤腔内の癒着を高率に引き起こして不妊症の一因となります。これらの疾患に対しては、ただ単に人工授精や体外受精などを繰り返しても、必ずしも有効であるとはいえません。手術によって筋腫や嚢腫を摘出したり、癒着を解除したりすることが必要です。この際に威力を発揮するのが内視鏡手術です。従来であれば開腹して行わなければなりませんでしたが、最小限のサイズの術創で同様の手術を行えます。入院期間も短くてすみ、早期の社会復帰も可能です。
内視鏡手術には、腹壁より腹腔内へアプローチする腹腔鏡手術と、子宮頸管より子宮内腔へアプローチする子宮鏡手術とがありますが、当部門においてはそのいずれに対しても対応が可能となっています。腹腔鏡手術は子宮筋腫や卵巣嚢腫、卵管や骨盤内の癒着などに対して行われ、子宮鏡手術は子宮内膜ポリープや粘膜下子宮筋腫などが対象となります。いずれも熟練したスタッフが治療にあたり、良好な成績をおさめています。
当部門では、同じスタッフが生殖補助医療と内視鏡手術を組み合わせた診療をシームレスにこなしていけるため、両領域の相乗効果が期待できます。

腹腔鏡手術

4K内視鏡システムを導入し、よい視野での安全な手術が可能です。また、子宮筋腫の回収にはin bag morcellationを採用し、破砕した筋腫が腹腔内に飛散することを防ぎます。巨大筋腫や多発筋腫に対する腹腔鏡補助下手術には多くの実施件数を誇り、他院で開腹手術を勧められた症例にも小さな創部での手術を提供しています。婦人科疾患による付属器切除、子宮全摘術にも対応しています。

子宮鏡手術

子宮内膜ポリープ、子宮粘膜下筋腫、流産組織遺残、子宮内癒着症(アッシャーマン症候群)、中隔子宮などが対象です。内膜機能を温存した手術を心掛けており、内膜の熱損傷がなく、痛みの少ない細径子宮鏡を採用し、シェーバー※によるポリープ手術やハサミ鉗子による中隔切除、癒着剥離術に対応可能です。
※シェーバーによるポリープ手術についての解説記事
子宮内ポリープが着床を邪魔している?!安全で安心できる方法:子宮鏡シェーバー
リプロダクション・婦人科内視鏡治療部門長 堤 治名誉病院長

体外受精胚移植(IVF-ET)

発育した卵胞から卵子を取り出し、精子と受精させて、子宮内に戻す治療のことです。月経開始後から経口薬あるいは注射薬を用いて卵巣刺激を行います。その際の方法として、ロング法、アンタゴニスト法、ショート法あるいはマイルド法や自然周期法などがありますが、当部門ではいずれの方法にも対応しており、患者様それぞれの状態にあわせて適切な方法をとるように心がけています。また、胚移植の時期についても、適正胚の数や状態をみながら採卵後3日目あるいは5日目(胚盤胞)で行っています。
当部門の体外受精はすべて外来ベースで行っており、また採卵時の麻酔は専門医が担当しています。

顕微授精(ICSI)

精子の数や運動性に問題があったり、卵子の透明帯や細胞膜に問題があるなどして正常な受精過程に障害を受ける場合には、精子を極細径のピペットで卵子細胞質内に注入する顕微授精(ICSI)を行います。この手技を正確かつ円滑に行うためには、最新の設備と熟練した技量が必要となりますが、当部門ではそのいずれをも兼ね備えています。当院では、従来法より卵子へのストレスを軽減できる、ピエゾICSIを導入しています。

卵管鏡下卵管形成術(FT)

不妊症には卵管通過障害が原因である卵管性不妊があります。
卵管性不妊は卵管が閉じてしまったりせまくなったりしていることで卵子と精子が受精できず自然妊娠が望めない状態のことです。

子宮卵管造影検査(HSG: Hysterosalpingography)などで卵管の通りや卵管周囲の癒着などを検査することができます。卵管の通りを回復する治療法として、卵管鏡下卵管形成術(FT: Falloposcopic tuboplasty)を行います。その際、卵巣・卵管采周囲の癒着などに対処できるよう腹腔鏡を併用して行います。

対象

一般的に子宮に近い場所に卵管閉塞(閉じている)や狭窄(狭くなっている)ことが確認された場合、手術の適応になります。ただし、当院では必ずしも近い部位でない卵管閉塞や狭窄の場合も手術適応を検討します。また、卵管留水症を含む病気がある場合は卵管造影や超音波検査結果をもとに、ご相談の上、手術の計画を進めます。

方法

手術の時期・・・月経終了から排卵日までの子宮内膜の薄い期間に行います。

腹腔鏡で腹腔内を観察し卵管周囲癒着などを改善します
 ↓
通色素検査で卵管通過性を確認します
 ↓
卵管鏡下卵管形成術(※)を行います

(※)卵管鏡下卵管形成術は卵管の閉塞(閉じている)、狭窄(狭くなっている)部位を膣から挿入したカテーテルのバルーンで広げてゆき卵管を開通させるものです。

治療効果

卵管鏡下卵管形成術による卵管の再開通率は90~95%であり、妊娠率は約25~30%で、これは体外受精の成績に匹敵します。そのうち術後1年間での妊娠が95%に上ります。術後1年間は自然妊娠での治療を目指します。それでも妊娠しない場合は、高度生殖補助医療(体外受精)へステップアップすることになります。

また、精子、胚の通路としての卵管機能が回復しても、受精、胚発育の場としての卵管機能が不良と考えられる所見があれば、自然妊娠を待たずに高度生殖補助医療(体外受精)をお勧めすることがあります。

問題点と合併症

卵管が回復しても手術後1年で30%程度卵管の再閉塞が生じるとの報告があります。

腹腔鏡下での手術に伴う一般的な合併症として出血や感染があげられます。さらに卵管鏡下での合併症は、卵管に穴があくことがありますが、通常は特に処置は必要なく経過観察を行います。

料金

保険適用の治療です。詳細はスタッフへお問い合わせください。

腹腔鏡併用下卵管鏡下卵管形成術(laparoscopic assisted falloposcopic tuboplasty)
費用  片側 225,000円 両側 365,000円
※別途室料がかかります。
※入院期間は3泊4日です。

着床前遺伝学的検査(PGT-A/SR)

当院は、日本産科婦人科学会が、見解に基づいて医学的、社会的視点からPGT-A/SRの実施に必要な条件を満たし、希望する皆さまに寄り添ったPGT-A/SRの検査が実施できることを認定した施設です。

PGT-Aとは

PGT-A(Preimplantation genetic screening for aneuploidy)とは、体外受精によって得られた胚(受精卵)の染色体数を胚移植前に検査する技術のことです。女性の年齢により卵における染色体数的異常が増えることがわかっており、世界中で妊娠率を上げ、流産率を減らす方法として広く行われています。しかし、胚盤胞までの培養が必要であり、胚に侵襲を与える胚生検が必要となり、全ての細胞が同じ染色体数を持っているわけではないモザイク胚の存在など、検査上の問題点がいくつか指摘されています。

対象者

  1. 反復して体外受精胚移植が不成功となった不妊症の方
  2. 過去の妊娠で2回以上流産(胎嚢確認後)を経験している方
  3. 夫婦いずれかが染色体構造異常(均衡型転座、ロバートソン転座)の保因者である方→PGT-SR(構造異常)の対象です。当院で実施可能です。

検査の流れ

内容 ご料金
1 ご夫婦で遺伝カウンセリングを受けていただきます 予約制(木・金・土) 20分:5,500円(税込)
2※ 同意書取得の上、採卵周期開始
3 胚盤胞が得られたら胚生検を施行し、PGT-Aを行います 検査費用 1個あたり 88,000円(税込)
4 PGT-Aの結果を遺伝カウンセリングでご説明します 予約制 20分:5,500円(税込)
5 正常胚があれば胚移植へ進みます

※凍結胚をお持ちの方で「対象者」に該当する方は、凍結卵を使用して3の検査へ進めます。その際は、別途「胚融解代」がかかります。

お問い合わせ・ご予約

山王病院 リプロダクション・婦人科内視鏡治療部門
月~土(祝日を除く) 14:00~17:00
03-6864-0489

参考リンク

解説:着床する可能性の高い胚を選ぶ、流産を予防するPGT-A(リプロダクション・婦人科内視鏡治療部門 久須美 真紀医師)

精巣からの精子回収(TESE)

精巣における造精能が不十分であったり、精子の通路が障害されていたりすると、射出精液中に精子が認められません。このような場合には、泌尿器科医と連携して精巣から直接精子を回収して顕微授精(ICSI)を行います。
また、適応があるケースでは、顕微鏡的に精巣を拡大観察しつつ、精子の採取を行うmicrodissection TESE(MDTESE)も併せて行っています。
(2022年9月より開始します)

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