「社会的卵子凍結」(リプロダクティブ卵子凍結)

当院では、従来より医学的適応による(がん治療などに伴う)卵子凍結を実施してまいりましたが、この度リプロダクティブヘルス(性や子どもを産むことに関わることにおいて、本人の意思が尊重され、自分らしく生きられること)を守る観点から、リプロダクティブ卵子凍結としていわゆる社会的卵子凍結も開始することといたしました。ご関心のある方はリプロダクション・婦人科内視鏡治療センターにご相談ください。

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1.卵子凍結(未受精卵凍結)とは

卵子は胎児期より減少し、加齢の変化(※1)を受け受精能も低下します。卵子凍結とは、将来の妊娠・出産に備えて、年齢の若い時点での卵子を事前に採取し凍結保存しておくことです。未婚の女性が対象となり、社会的卵子凍結と医学的卵子凍結に分類されます。
社会的卵子凍結とは、健康な女性が卵子の加齢による妊娠率の低下を回避する妊孕性温存(将来自分の子どもを授かる可能性を残す)療法です。将来妊娠を希望した時に凍結した卵子を融解し、体外受精(生殖補助医療; ART)を用いて妊娠を目指します。

(1)未受精卵凍結のメリット
~なぜ未受精卵の凍結保存が必要なのですか~

加齢により(特に35歳以上)、妊娠率が低下し流産率が増加します。これらは、卵の染色体異常や受精後の胚発育の悪化により起こると考えられていますがメカニズムは明らかでなく、残念ながら現時点ではその予防方法もありません。
未受精卵凍結では、患者様個別の卵巣機能によりますが、基本的に一度の採卵で、年齢の若い時点での良好な状態の卵子を複数個保存することができます。そのため、将来妊娠を希望する際に、加齢による妊娠までの身体的・時間的負担を軽減することができると考えます。
また、社会的卵子凍結は実施時期を選択できます、そのため、女性のキャリア形成の自律性、自由度を高めることが期待され、女性のリプロダクティブヘルス(※2)を守る有力な手段になりうると考えます。

  • リプロダクティブヘルス・ライツについて(※2)
    リプロダクティブヘルスとは、性と生殖に関する機能と活動過程において、肉体的・精神的・社会的にすべてが満たされ良好な状態にあることです。
    女性と男性両方に関わることであり、また生殖年齢に関わらず幼少期・思春期・青年期など一生を通じた健康です。
    そして、リプロダクティブ ・ライツとは、すべての個人やカップルが、産むか産まないか、いつ・何人子どもを持つかを自分で決めることができ、そのために妊娠、出産、中絶について十分な情報を得られる権利です。分かり易い言葉でいえば、「女性は生みたいときに生み、生みたくない時には生まない」権利をもっているということです。

(2)社会的卵子凍結の留意点
~卵子凍結をすれば妊娠できますか、
リスクはありますか~

卵子凍結をすれば将来必ず妊娠・出産できますか

本治療は将来の妊娠・出産を必ずしも保障するものではありません。

卵子凍結を行う際のリスクはありますか

卵子凍結は、体外受精のプロセスの一部であり、体外受精と同等のリスクがあります。例えば、排卵誘発剤の使用による卵巣過剰刺激症候群や、採卵に伴う合併症として卵巣出血、多臓器損傷等、骨盤腹膜炎(子宮や卵巣の感染)等が起こる可能性があります。これらは発生頻度は高くありませんが、卵巣腫瘍、卵管留水腫、内膜症、子宮筋腫などの合併症がある場合はこれらのリスクが高くなる可能性があります。

凍結した卵子を使って将来自然妊娠は可能ですか

凍結卵子を使用して妊娠を希望する場合は、必ず体外受精の治療が必要となります。男性側に、特に男性不妊の原因がない場合でも顕微授精という技術を使用します。

凍結した卵子はすべて受精・着床につなげることができますか

卵子を凍結する場合、受精に適したもののみを選択して凍結しますが、融解した卵子がすべて受精するわけではありません。また受精しても順調に胚として発育しない場合もあります。胚移植した場合の着床率は、一般の胚移植と遜色ないというデータもありますが、現状では多少は低いと考えておくべきでしょう。そのため卵子凍結においても排卵誘発をおこないできる範囲で多数の卵子を確保いたします。

凍結卵子はどのように保存するのですか

当院ではガラス化凍結保存法: vitrification methodを用いて、専用の器具を使用して未受精卵子を液体窒素内で凍結保存します。この条件下では、卵子は長期間安定して保存が可能であると考えられていますが、長期間保存の後に融解を行った例が少ないため今後の報告が待たれるところです。

卵子凍結をすれば、年齢に関係なく妊娠・出産ができますか

卵子凍結で妊孕性(妊娠するための力)は温存することができますが、妊娠中の母体合併症などは妊娠時の年齢や健康状態に依存します。したがって、妊娠・出産を希望される際には、再度、高齢妊娠に伴うリスクやその他の合併症について十分評価・理解したうえで、融解・受精・胚移植を行います。 (参考) 一般社団法人日本生殖医学会|倫理委員会報告「未受精卵子および卵巣組織の凍結・保存に関するガイドライン」

(3)凍結した卵子を将来使用する際の妊娠率について

アメリカ生殖医学会(ASRM)の卵子凍結に関するガイドライン(2013年)

凍結卵子の融解後生存率 90~97%
受精率 71~79%
着床率 17~41%
移植当たりの臨床的妊娠率 36~61%

凍結時の年齢で、妊娠率・出産率は変化します。したがって、少なくとも8-10個以上の卵子を凍結するほうが望ましく、かつ年齢が若いほど少ない個数でよいと考えられます。
なお、上記成績は2013年以前のもので、現在では成績は大幅に向上していると考えられます。当院では今後の臨床成績をまとめ、公表していく所存です。

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