がん生殖医療
がん治療前・治療中に妊孕性温存を希望される方へ
当院では、女性医療センターリプロダクション・婦人科内視鏡部門を中心に、がん治療を行う患者様を対象とした妊孕性温存を行っております。
妊孕性温存とは
抗がん剤や放射線照射は、卵巣内の卵子数減少や精巣の精子を作る機能の低下を引き起こし、将来の生殖機能を低下させる可能性があります。こうした患者様の、妊娠できる能力を温存することを妊孕性温存といいます。
具体的には、女性であれば卵子や受精卵、卵巣組織の凍結という方法があり、男性であれば精子凍結がその方法となります。妊孕性温存療法によりがんの病状が悪化したり、治療開始が遅れたりするリスクもあるため、この治療には原疾患の主治医の承諾書が必要となります。
Ⅰ.女性の妊孕性温存について
対象
女性の場合、原則として43歳未満の方が対象となります。
婦人科がんの場合には状況が異なるので主治医にご相談ください。
方法
女性の妊孕性温存には以下の3つの方法があります。
- 卵子凍結…精子と受精させる前の未受精卵子の凍結
- 受精卵凍結…卵子と精子を受精させてできた胚の凍結
- 卵巣組織凍結…腹腔鏡手術で卵巣を摘出し皮質(卵巣表面の組織)を凍結
患者様の年齢や婚姻状況等により妊孕性温存の方法は異なります。
卵子凍結より受精卵凍結の方が融解後の妊娠率がやや高いため、ご結婚されている方はできるだけ受精卵凍結を行います。未婚の方や受精卵凍結が難しい方は卵子凍結を行います。どちらも通常の体外受精と同様の排卵誘発と採卵が必要です。
排卵誘発をする時間的余裕がなく緊急で抗がん剤治療や放射線治療を開始しなくてはならない患者様には、卵巣組織凍結という方法があります。腹腔鏡下手術で片側卵巣を摘出し、卵巣組織を小さく切片化して凍結保存するという方法です。がん治療が終了し妊娠の許可が下りた時に凍結卵巣組織を融解し体内に移植します。
こちらは京野アートクリニックグループの日本卵巣組織凍結保存センター(HOPE)との協力体制の下で行っており、当院ではHOPEに登録をしていただいた患者様の腹腔鏡下手術を行っています。卵巣組織凍結に関して詳しくは京野アートクリニックホームページをご覧ください。
費用
卵子凍結(排卵誘発料込) | 約30~40万円 |
---|---|
受精卵凍結 | 約40~60万円 |
卵巣組織凍結のための腹腔鏡手術費用(入院費込み) | 約60万円 |
凍結保存更新料(1年ごと) | 5.5万円 |
卵巣組織凍結の凍結保存料、年度毎の更新料につきましては(HOPE)にご確認ください。
自治体によっては、がん生殖医療に対する助成金制度を設けているところがありますので、お住まいの自治体にご確認ください。
Ⅱ.男性の妊孕能温存について
近年、がんの集学的治療成績の向上とともに治療後の患者様の生活の質(QOL)も上がって、長期生存例が増えてきています。現在では小児、思春期・若年がん患者における妊孕性温存療法は、がん治療医の多くが考慮すべき極めて重要な課題であると認識されています。一般的に抗がん剤治療により一旦造精機能は低下し、無精子症に陥ることもまれではありません。また骨盤内の臓器の手術によっては勃起不全、射精障害等の性機能障害が起こることがあり、性行為が出来なくなる場合もあります。
このような患者様に対して当院では治療が開始される前に射出精子を凍結し、がん治療が終了した後に妊活を開始する妊孕能温存療法を行っております。
対象
- 泌尿器疾患では精巣腫瘍があります。精巣腫瘍は20歳~30歳代に好発するがんで、生殖年齢に多いことから担当医から治療前に精子凍結保存を希望されるか十分な説明がなされます。
- その他白血病や悪性リンパ腫、消化器がん、脳腫瘍、悪性黒色腫、骨軟部腫瘍等のあらゆる悪性疾患の患者様が対象になります。
方法
病気の進行状況により異なると思われますが、患者様本人が当院へ来院可能な場合には、ご来院の上、精液を採取していただきます。当院まで来られない患者様は入院先の病院で精液を採取してご家族に届けて頂きます。なお1度目の精液所見が悪い場合には治療まで余裕がある方であれば再度精液を取り直していただくことも可能です。この場合には凍結保存料を2回分お支払いいただきます。
当院では祭日でも精子凍結保存が行える体制を取っております。
来院時の精液検査で無精子症の場合
精巣腫瘍の患者様は、時に無精子症の方がおられます。その場合、精子は凍結保存できませんので、ただちにがんの治療を開始していただきます。
治療終了後に再診して頂き、無精子症が続いている場合は、精巣内精子回収術を行うと精子が採取できることがあり、顕微授精によって妊娠できる可能性があります。
費用
初診時:精子凍結保存料(1年間) | 5.5万円 |
---|---|
次年度よりの更新料(1年間) | 3.3万円 |
妊活時:精子融解料(1回) | 2.2万円 |
妊活時:顕微授精料(1回) | 5.5万円 |
標準精巣内精子回収術 | 27.5万円 |
顕微鏡下精巣内精子回収術 | 38.5万円 |
問い合わせ
女性医療センター リプロダクション・婦人科内視鏡治療部門 | |
---|---|
電話受付時間 | 日曜を除く14:00~17:00 |
電話番号 | 03-6864-0489 |
年末年始など一部の日を除き、土曜・祝日(祝日は03-3402-3151)にも予約およびお問い合わせを受け付けております。
当部門に関するページ一覧
当部門の特徴
当部門ご来院の方へ
- 当部門へのお問い合わせ
- 03-6864-0489 電話受付時間:日曜日を除く14~17時 年末年始など一部の日を除き、土曜・祝日(祝日は03-3402-3151)にも予約およびお問い合わせを受け付けております。