ナノナイフの原理と装置

ナノナイフの原理

ナノナイフは2~6本の針を、腫瘍を取り囲むように刺し、針と針の間に3,000ボルトの高電圧で、1万分の1秒の短時間のパルス電流を流すことによって、癌細胞に小さな穴を開け死滅させる治療法です。
針は長さ15 cmで、針の太さは1.1mmです。針が細いため、皮膚の上から、超音波でがんをとらえながら針を進めていきます。針の先端に電気が流れる電極部分があり、その長さは膵がんの場合1.5 cmに調節します。針と針の間隔は2 cmで、がんの大きさが2 cmの場合で針を4本刺すと、丁度がんの周りを取り囲むように針が置かれます。そうすると針の5mm外側まで通電され、約3cmの球状の範囲の細胞が死滅します。

電極針
電極針。長さ15cmで、太さは1.1mm (19 ゲージ)。先端の銀色の部分が通電する電極で、長さは手元のノブで調節する。

電流を流す時間は1回のパルス当たり100μ秒(1万分の1秒)ときわめて短い時間です。そのパルス電流をおよそ1秒に1回の間隔で80~160回流します。4本の針を刺した場合、電流の流れ方は6通りあるので、500~1,000回流すことになります。従って電流を流している実際の治療時間は8~16分くらいです。
ナノナイフ治療の一般名は、日本語では「不可逆電気穿孔法」と言い、英語では Irreversible electroporation (IRE)と言われます。電気穿孔法(electroporation)は、実験室で、培養した細胞に遺伝子を入れ込む遺伝子導入に使われてきた技術です。高い電圧でたくさんの電流を流すと、細胞に開いた穴が塞がらず細胞の中身が外に流れ出し細胞が死んでいきます。
ナノナイフ (NanoKnife®)は、米国のアンギオダイナミック社から市販されている不可逆電気穿孔法の機械の商品名です。
正常の臓器(内臓)は、臓器の働きをする細胞の集合と、それらに栄養を運ぶ血管などの間質と呼ばれる支持組織からなっています。ぶどうに例えると、ブドウの実が実質の細胞で、茎やつるが間質、支持組織になります。
ナノナイフの電流は間質を作っている線維には全く影響がないため、細胞だけが死滅し、臓器の構造や血管、神経などは無傷です。このことが、重要な血管がすぐ近くにある膵臓のがんの治療にナノナイフが使われる理由です。

装置

ナノナイフ装置と心電図モニター
ナノナイフ装置と心電図モニター

ナノナイフの装置は下の写真にあるように、電流発生装置、心電図モニター、電極針から成ります。電流発生装置は幅60cm、奥行きが60 cm、高さ1.5 mの、小型の冷蔵庫ほどの大きさです。電極の接続ポートは6個あり、最大6本まで電極をつないで治療することができます。膵がんの場合は4本使うことを基本としています。
この通電部分の長さは、膵がんの治療には通常1.5 cmとしています。3 cmの大きさの膵がんを治療する場合は、奥をまず治療し、1.5 cm引き抜いて重ねて通電します。
ナノナイフの電流が針と針の間だけでなく、少ないながらも心臓にも流れます。そのとき、不整脈を起こすことがあります。不整脈を起きにくくするため、心電図モニターを使って心臓の不応期と呼ばれるタイミングに電流を流します。

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